最後のインストゥルメンタルミュージシャン

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 歌ものが氾濫しているのは、今に始まったことではない。昔からだ。  だが、最近は度が過ぎているように思える。  店内で流れるBGMはもとより、学校で習うクラシック音楽、果てはドラマやアニメ、ゲーム等のBGMにまで歌詞が付いているのだ。  なにゆえ、ベートーベンの『運命』や、(ひげ)を生やした配管工みたいな男が活躍するアクションゲームのBGMにまで、歌詞が付いているのだろう。  さすがに、ドラマやアニメ、キャラクターボイス付きのゲーム等で登場人物がしゃべるシーンでは、歌ものBGMは流れないが、それでもやりすぎだと思う。  はあ、インストゥルメンタル天国だったクラシックやゲームまで、このざまとは……  思えば、昔から、その兆候はあった。  例えば、シューベルトの『(ます)』はインストゥルメンタルも有名だが、まず、歌ありきの曲だった。  あの大ヒットRPGでは、銀髪イケメンの上半身とイカのような下半身を持つラスボス戦で、某ゴシックホラー系探索型アクションゲームでは、スタッフロールで流れ、大量の弾を降らせてくるフラスコのようなユニークな敵が出てくるシューティングゲームの再現版では、BGMを歌ものに差し替えることができた。  二十一世紀になる前のことだ。探せば他にもあるかもしれない。
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