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高校
颯くんが地元で1番偏差値の高い高校を受けると聞いたので、私は、一生懸命勉強して、何とか同じ高校に合格することができた。
けれど、これまでの9年間が奇跡でしかなかったと思い知らせるかのように、無情にも初めて違うクラスになった。
頑張って颯くんと同じ高校に入ったものの、颯くんとは滅多に会えない上に、勉強はついていくのがやっと。
元々、大して頭の良くない私は、ずっと勉強に追われる毎日を過ごしていた。
2年生の時、颯くんはまた生徒会長に立候補したけれど、もう私に応援演説を頼むことはなかった。
それを何だか、残念に思う私がいる。
もちろん、スピーチなんてやりたいわけじゃない。
ただ、颯くんにとって、ほんの少し特別な存在でありたかっただけ。
恋人になりたいなんて大それたことは思ってない。
颯くんの応援をするのは、いつも私だったらいいのにって思うだけ。
小学校からずっと同じクラスだったのに、高校では一度も同じクラスになれなかった。
部活動もサッカー部の颯くんと文芸部の私とでは、全く接点がない。
高校3年間、すれ違うことさえ稀で、挨拶すら、数えるほどしかしていない。
その後、私は無事、地元の国立大学に合格した。
東京に進学する颯くんと、地元に残る私。
きっと卒業したら、もう会うことはないだろう。
私は決意した。
卒業式の後で、告白しよう!
もう会うこともないんだし、自分の想いだけ伝えて、大学で新しい恋を見つけよう。
卒業式前夜、私はそう心に決めて、眠りに就いた。
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