嘉仁沢君

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 吉川さんは本当にちゃんと僕のことを好きらしかった。  いろいろなところへ出かけたし、お互いの誕生日やクリスマスも一緒に過ごした。初詣に行った時には振り袖姿を披露してくれたし、一緒にプールにも行って刺激的すぎる水着姿を拝ませてもくれた。 「好きだよ」  僕がそういうと、吉川さんも笑顔で返してくれた。 「うん、私も大好き」  その笑顔はとてもまっすぐで、僕が一番じゃないなんて信じられなかった。  でも、嘉仁沢にメッセージアプリでメッセージ送っていたり、嘉仁沢の誕生日プレゼントに悩んでいたり、嘉仁沢用のバレンタインチョコを用意して、渡せるかな、とドキドキしたりしていた。  僕と吉川さんは七組で、二組は少し離れていたけど、休み時間はわざわざ嘉仁沢を見に行ったりもしていたらしい。わざわざ僕に感想を聞かせるようなことはしなかったけど、相変わらず嘉仁沢の流行も続いていた。  僕は何となく見に行ったら負けのような気がして、長らく二組には近づかなかった。周りの男子にそれとなく話を聞いたりもしてみたけれど、良く知っている奴はいなかった。何者なんだ、嘉仁沢。
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