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「だって、そんなのおかしいじゃん。高校卒業して随分経つのに……。ひょっとして会ってる?」
「会ってないよ。嘉仁沢君が会ってくれるわけないじゃん。家庭だってあるんだよ?」
「え、家庭? あいつ、結婚してんの?」
「あいつなんて呼び方やめて。結婚してるよ。奥さんになれた人、ほんと幸せだよね」
「だったら猶更おかしいよ。なんで嘉仁沢の事好きだって言えるの?」
「なんでって……好きだからだよ?」
吉川さんの言う事がまったく理解できなかった。
なぜ平然と嘉仁沢が好きだと言えるのか。自分のどこに非があるの、と言わんばかりのきょとん顔はいったいなんだ。女性の間で人気だから好きと言う言い方も気に入らない。そんな適当な話があるものか。
「ねえ、もしかして、こっそり会ってるんじゃない?」
「どういう意味?」
「だから、もしかして嘉仁沢と不倫関係にある……」
僕の言葉は最後まで続かなかった。
なぜならば、言葉の途中で温くなったカフェラテを盛大にかけられたからだ。
「最っ低!! 君の事は好きだけど、いくら何でもあんまりよ。嘉仁沢君が不倫なんかするわけないでしょ!! 嘉仁沢君のこと、バカにしないでよ!!」
吉川さんは涙目でそう叫び、そのまま席を立ち、カフェの出口へと速足で歩き始めた。
「ちょ、まっ……」
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