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慌てて後を追おうとした僕の前に、顔を般若のように強張らせた女性達が立ちはだかった。
「ちょっと、嘉仁沢君が不倫とか有り得ないんですけど!!」
「失礼にもほどがあるわよ」
「謝んなさいよ、嘉仁沢君に!! 土下座よ、土下座!!」
ずいっと詰め寄ってくる女性達。
「ちょ、え、なんなんですか?」
「土下座して謝んなさいって言ってんのよ」
「ほら、どーげーざ!! どーげーざ!!」
拍を取りながら大声を上げ始めた女性に、他の女性達も次々と続いた。店内で始まる土下座の大合唱。
気が付けば、店中の女性が僕を睨みつけていた。
「いや、待って……」
なんなんだよ、蟹沢。
お前、マジなんなんだよ。
「どーげーざ!! どーげーざ!!」
迫り来る女性たち、彼女らはいつの間にかスマートフォンのカメラをこちらに向けて構えていた。
ドン、と背中が壁に当たった。
「どーげーざ!! どーげーざ!!」
女性たちの手が、僕を押さえつけんと伸びてくる。
「諦めて土下座しなさいよ」
「ほら、心から謝ればみんな許してくれるんだから」
「やめろ、嫌だ!!」
僕は体を大きく振り、手を振り回して彼女らの手を払いのけようと暴れた。
だが、多勢に無勢。
僕に助けはなく、やがて腕の動きも封じられた。もはやこれまで、そう思った時、店内に声が響いた。
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