僕の好み

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僕の好み

結局、自分の事が分からないまま、時が過ぎた。 18時頃、妹が帰宅した。何か買い物をしてきたみたいで、 ビニール袋を持っている。 「冷蔵庫に何も無かったので、食材を買ってきた。」と言ってる。 「今日はカレーにする」と言ってる。 妹は、どの様な人物なのか興味がわいた。 料理が上手なのかも知れない。 でも、カレーは誰でも出来るか。 と、思いながら、気付かれないように、妹を観察していた。   楽しそうに料理をしてる。包丁の使い方も上手だ。   「ねえ、ケイコって、料理作るの、好き?」 と、聞いてみた。 「好きだけど、食べる方がもっと好き。 後は、カレーを煮込むだけ、、。 もうチョット待っててね。」 と言いって、僕の座っている、ソファーに腰を下ろした。 此のソファーは長椅子で三人ぐらいは座れる。 広げるとベッドにもなる。 妹は、テレビの電源をオンにした。 (花瓶に気付くだろうか?)と一瞬思ったが、 妹は何も気付いていない。 テレビのどの様な番組が、僕は好きだったのか?興味がわいた。 「僕って、どんな番組好きだった?」 妹は、びっくりしたのか、僕の顔ジーと見て言った。 「何が好きだった?と聞かれても、よく分からないけど、 お兄ちゃんと子供の頃観たのは、サスペンスドラマを観たわ。 歌番組も観たし、野球もボクシングも一緒に観たわ。」 「僕、どこの野球チームのファンだった?」 「ベースターズよ。昔からずーっとベースターズ。 それも、忘れてしまったの?信じられない。あれだけ好きだったのに、本当に、、、。」 妹は悲しそうな顔をした。 これが演技だったら、相当な女優だ。 カレーのいい匂いがしてきた。 「僕は辛口が好きだった?、それとも甘口?どっちだった」 「お兄ちゃんは辛口だったよ。激辛では無いけど。 私も辛口が好き。甘いカレーって何!って感じよね。 だから、今日も辛口カレー買って来た」 「ご飯は、?」 「パックの物で、チンするだけでいいの。」 それから、二人で辛口カレーを食べた。 美味しかった。 妹に聞いてみた。 「いつまで、ここに居るの?」 妹は黙っている。何も言わない。 言えないのかもしれない。 暫くして、言った。 「お兄ちゃんの記憶が戻るまで、此処に居るよ。」 と、僕は複雑な気持ちだった。 妹の愛情? それとも、誰かに雇われているの? どっち何だろう?? 信じる事が出来ない辛さ、お分かりになるでしょう。 一体、私は誰、妹は本当の妹なの?
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