両親の登場

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両親の登場

退院した私は、妹に従いタクシーに乗り込んだ。 この街並みの風景は、私の記憶に無い。 15分ぐらい走ったのだろうか? タクシーが着いた所は、市営のアパートみたいな所であった。 古びた建物が、私の目を覆った。 4階建のアパート。 妹は階段を登りながら、話しかけてくる。 「覚えていないの?この階段。お兄ちゃんこの階段から落ちた事あるのよ。怪我はしなかったけど・・・」 と、言われたが僕は、首を横に振るしか無かった。 妹は、妹の住む部屋に案内してくれる。 女の人の部屋に入るのに、ためらいがあったが、妹であるならば何ら問題は無い。 そこは、ワンルームで一人暮でも狭過ぎる部屋である。 部屋は綺麗に片付いており、掃除もされている。 部屋には、シングルベッドが置いてあるのだが、それは部屋の5分の一を占めている。 トイレと風呂が一緒になっている。 小さなキッチンが有り、冷蔵庫も小さい。 テーブルとソファがあるがそれも小さい。 妹に恋人はいるのだろうか? 僕にも恋人がいるのだろうか? 「お兄ちゃん、ここに座って。立っていると、威圧感あるから」 妹は、ソファーに座っている。 僕は言われるまま、妹の指定した場所に腰を下ろした。 「ここに来ても何も思い出さない?」 とまるで、恋人の様に甘えた声で聞いて来た。 「全然、思い出さない。僕は、以前からここに来たことあるのか?」 「お兄ちゃん、時々来てたわよ。来ては私に、お小遣いくれたわよ。」 (本当か?)と、思ったが、言葉に口にならなかった。 「僕はどんな、仕事してたの?」と疑問をぶつけてみた。 妹が言うには、「僕はある研究室で研究員として働いる」という事だった。 研究の内容は、妹は知らない。 その時である、扉をノックする音が僕の耳に届く。 やって来たのは、男と女。 60代のカップルだ。 「両親です」妹から紹介された。 僕にはその二人は初対面の様に思えたが、両親は僕を見て涙ぐんでいた。 「生きていてくれて良かった。ねえ、母さん」 「本当ね、父さん」 の会話があった後、「本当に覚えていないのか?」と同時に聞かれた。 (そんなに責められても、覚えていません。)と、僕は心で叫んでいた、。 私は、いったい誰⁉️
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