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気づけば周りの人気も少なくなり、私たちは静かな砂浜に着いた。
歩いているだけで靴の中に砂が入ってきて心地が悪い。それに海藻の匂いが風で流れてくるようで、苦手な場所……
でも、自信ありげな表情な彼女が指差す空は確かに「来てよかった」と思えるものだった。
「トワイ…ライト…」
こないだ図書室かどこかで読んだ本に書いてあった言葉。確か、この時間帯の事だったような……
夕暮れと夜のちょうど境目に、私たちはいるんだ。かろうじて陽の光が見えるけど、海と東の空は闇の中。そして、無数の光が一つ、また一つと生まれていく。
そんな不思議な時間、魔法のような世界を眺めていると、風音の隙間からちいさな唄声が聞こえてきた。
「……きらきらひかる、おそらのほしよ」
私の左耳を響かせたその声は、今まで以上に幸せそうで、きっと楽譜にしたら音符が跳ね回るんじゃないかな。
いや……別の意味でも……
「……あ、あの、それ音ずれてない?」
「えっ、嘘⁉︎ そんな事ないよ⁉︎」
「いや、ホントのメロディはこうだって……」
彼女の唄は、確かに可愛い唄声だったけど音のズレがどうしても気になってしまった。楽しく唄っているのだから無粋な事をしたな、とも思いつつ私がお手本役として唄ってあげる。
「……違いがわからない」
「ええっ⁉︎ だって君の唄はこうじゃない」
「うーん、よく分かんないよ〜」
分かりやすい違いだと思うのだけれど…じゃあ、この方法なら……
「私と一緒に唄ってみよう?」
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