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夜空に燦然と輝く星屑の端に、青白く光るまるい月。
静かに波打つ海原に、ぽったりその光の雫を落としている。
ユラユラと揺れる小船の甲板には、月よりうんと小さい幾つもの青い光が、星空の輝きに呼応するかのように点滅を繰り返しては、ピチピチ水を帯びた音を立てうごめく。
私はここにいる。
ちゃんと生きている。
この命が燃え尽きるまで、決して光を絶やさない。
それは果てしなく続く深い闇の中で、力強く燃える命の灯火。
その命に導かれるように、遥か遠い場所から戻ってきた光の玉が夜空へと舞い上がっていく。数え切れない星粒となって。
まるで夜空と海が、ひっくり返ったようだった。
──月が碧い涙をこぼす時、白銀の龍が星屑の海に舞い降り、御霊をさらいにやってくる。
青い鱗を纏う龍。その赤い眼に睨まれた選ばれし者、魂を抜かれあの世とこの世を繋ぐ番人となる。
祖母がよく話してくれた碧い月の伝説。
あれは幻だったのだろうか?
いや、決して幻なんかじゃない。
私は子供の頃に見た、あの月夜の出来事を今も忘れない。
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