第1章 僕はジュニョク

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第1章 僕はジュニョク

僕には父が居ない いや正確には知らない 母はいつも頑張って育ててくれた。 だから、少しも寂しくなかった 少し感情を現すのが幼い頃から苦手だった 話す相手は 母と星空だけだった 玄関先の芝生に寝転びいつも眺めていた 母はそれを凄く嫌がり泣いたりもした 成長して母の悲しみが解る頃から 星や空や宇宙についての本を読み出した 14歳のクリスマスに母に言ってみた 『大学に行きたい❗したい勉強がある』 母はニッコリ笑って言った 『お互いにもっと頑張ればきっと大丈夫』 ハイスクールに入った辺りから 母は夜の仕事を増やした、学費の為だな 母に感謝しながら 星空との自由な夜を楽しんでいた どうしてこんなに惹かれるのか 全く理解出来ないけれど 知識だけは増えていった 知識は、成績に反映していく 行きたい大学も決めた 母は嬉しそうだったが何か疲れていた 大学入学が決まった時に母が倒れた 何も知らなかった自分を責めた もう随分前から病と戦っていた 学費や生活費を貯えてくれていた事 中々お見舞いに行けなかった どんな顔したら良いのか泣いたらダメだとか 言い訳ばかり重ねて避けていた ある日病院から連絡が来た 『今会わなければ❗後悔しますよ‼️』 自分の情けなさに涙が溢れた 駆けつけた病室の母は 沢山のチューブに繋がれていたが ピンクに染まった頬で優しく微笑んだ 『ここまでしなきゃ、あなた来ないから』 少し腹立ちはあったけど何か嬉しかった 母は語りだした。 何にも知らなかった全てを 長い長い時間だったけれど あっていうまの奇跡みたいな時間だった 母は語り終わると もう一度笑って 引き寄せてキスをして 僕の、腕の中から旅立った。
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