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杉林は困惑して俯いていた。私は身体の中から怒りがふつふつと湧いてきた。
「一発殴ってもいいですか?」
「ええ、いいわ」
私は渾身の力を込めて拳で杉林の顔面を殴った。杉林は痛そうな顔をしていたがすぐに笑顔になった。私はそれがむかついてしょうがなかった。
「これで気が済んだかしら。あなたには警察署から感謝状が贈られるから後日、警察署に出向いてくださいね。騙し屋の代金もその時に支払います」
私はそれに応えず大勢の人間を押し除けて帰路についた。騙し屋が騙されるなんて酷い目に遭った。
しかし私が騙されたのはそれだけではなかった。後日、警察署に出向いて辺境の家屋で命の危険に晒されたことや杉林という警察官が感謝状を贈ると話したことを警察官に話しても誰もそんな話を知らないと言われた。
杉林という警察官は存在しなかった。家屋でそんな事件があったことも報告されてなかった。私はいったい誰に頼まれてこんなことになったのか。私はまた騙されてしまった。
むかむかする思いとホラー映画を見たような寒気がすると思いながら、凱旋パレードの光景をテレビで眺めていた。その近くに異例の昇進で首相補佐の任についた人の姿が映っていた。そこにいたのは杉林だった。
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