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レクリエーション
今日はクラスの親子レクの日。
親子対抗でドッヂボールをするとのことで、将太は朝からテンションが高い。
私も久々の親子行事であることと、北村先生に会えるということで、朝からそわついた気持ちだ。
今日は日曜日のため、夫も参加することになっている。
やましいことなどなにもない。
堂々と参加するだけなのだが、やはり、少々夫に罪悪感を感じるのも事実だ。
「ママ、俺の上靴になるスニーカーってあったっけ?」
夫がシューズクロークで自分の靴を探している。
「あるある、準備してるよ。」
準備に抜かりなし。
家を出て、学校までの道のり3人並んで歩く。
「俺パパ狙うから!ママとも敵だったら狙うよ~!」
張り切っている将太が可愛いらしい。
いつまでこんな風に並んで歩いてくれるかな?なんて、考えてしまって、淋しくなる。
ーーーーー
「キャー!」
「来た来た!そっち行くよー!」
女子生徒の逃げ惑う可愛い声と、年甲斐もなくキャッキャいう母親達。
31名の生徒と、北村先生、副担任の先生。
それに、母親22名、父親12名の参加だった。
親子対抗戦で、チームが分けられた。
審判は北村先生。
北村先生は、有名なスポーツブランドの黒いジャージを着こなして、本日も変わらずイケメン。そしてイケボ…
完璧だ。
夫にバレないように、心の中で指でハートをつくったりなんかして1人コソコソと楽しむ。(返事の指ハートをこっそり返してくれるっていう妄想をしてみたりして)
お休みのチームと、妊婦の母親、赤ちゃん連れの母親はコートの周りを取り囲むように各々座って応援に励んでいた。
夫ともチームが別れ、最初は私の出番だった。
対戦相手に将太はいない。残念だ。
私はスポーツが苦手ではない。
飛んでくる球を難なくかわすが、小3男子、意外と侮れない。
『まだまだ動けるのよ』と見せつけるようにムキになる母親達。
いや、北村先生の注目を浴びたいだけかもしれない。
先生の笑顔が眩しい。
ボールが誰かにヒットすると、ピッと素早く笛を吹く。
生徒側にボールが渡った。
豊満な体格のいかにも母ちゃんな小田さんが狙われた。
小田さんは身構える。
ちょっと浮いたボールは、小田さんの顔面目掛けて飛んできて、慌てて逃げようとした小田さんは、足をもつれさせてしまった。
迫ってくる小田さん。
私は小田さんに張り倒された。
ーーーッツ
左足に激痛。
会場が騒つく。
「佐倉さん、大丈夫ですか!?」
私に一直線に駆けつけてくれる北村先生。
「あ、大丈…ッツ」
みるみるうちに腫れてくる。
「とにかく、冷やしましょう。失礼します。」
そう言って、先生はひょいっと軽々しく抱えあげる。
えっ、えっ、えぇぇぇえぇ!?!?
まさかの展開に私の心はざわついた。
それと同じくらいに会場もざわついている。
当たり前だ。
「いや、先生、大丈夫です、おろして…」
「いいから、じっとしてください。」
ひゃー!!!!
なんだ、このご褒美は!!!
そんな昇天しそうになっている私を夫が現実へ引き戻す。
「先生、うちのがすみません。」
「ママっ大丈夫?」
将太と夫が心配そうに駆け寄ってきた。
「あ、お父さん、あ、すみません、僕…咄嗟に…」
「いやいや、そっち、おろしてください、あと僕やるんで。」
落ち着き払った夫の声。
「そうです先生、戻って審判続けてください。子供たちも動揺してますし…」
私も、慌てて夫に続ける。
「あ、じゃ、すみません。お願いします。コールドスプレーそこにあります。湿布も…」と北村先生が応急セットのある方を指さそうとしたとき、副担任の先生がすでに用意してくれていた。
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