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病院
救急当番病院は思いの他すいていた。
私よりも若いか、同じくらいの女医さんが冷たい手で私の足首を触る。
「痛い?」
よくわからないが、ため口だ。
「最初は痛かったですが、今はそこまで…」
「そっか、たぶん折れてないと思うけど、念のためレントゲン撮ります。」
そう言って、シュッシュっと手をアルコール消毒してから、パソコンをカタカタと打ち始める。
1つに束ねた黒髪はモサモサで、縛りなおしてあげたいくらいだ。
「ではこちらに…」と、看護師さんに連れていかれる。
病院には便利な車椅子というものがあって、スイスイとあちこちへ勝手に連れていかれる。
なので、夫はただ廊下でぼーっとしているだけでよかった。
結果は、ただの捻挫ということで、全治1カ月といったところらしい。
帰りには松葉づえを貸してくれた。
「無理しないで、休めるときは足高くしてください。お大事に~。」
モサモサ頭の女医が、こちらも見ずにそう告げて診察終了。
「捻挫程度で良かったね。」
夫が支払いを終えて、私の隣に座る。
「うん、ごめんね。」
「しかたないよ。治るまでは無理するなよ。」
「将太待ってるね。早く帰らないとね…」
「ママこんなで大変だから、なんかお惣菜買って帰ろうか。」
優しい夫の気遣いが素直にうれしい。
そしてこんな時、決まって少し罪悪感を感じてしまう。
夫もいたのに、指ハートなんか送ってたから罰が当たったのかな…
でも、また呼び方がママに戻っていて、それが私をちょっぴり淋しくさせる。
夫は本当にやきもちなんて焼いてくれたのかな。
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