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私は思いがけない夫の言葉に、体が固まる。
浮気がばれた?
いやいや、妄想だし。
え、何で?
どうしよう?
なんか言わないと…
「なんで私が浮気してると思ったの?」
混乱のあまり、第一声を間違える。
「…否定しないんだ。」
悲しく沈んだ夫の声。
掛け時計の秒針の音だけが、寝室に響く。
数分、いや、1分にも満たない時間だったのかもしれない。
私が本当のことを言おうとして、口を開きかけた時、夫が先に沈黙を破った。
「相手、北村先生なんだろ?」
私は慌てて、またしても返答を間違える。
「…なんで!?」
夫は深くため息をつく。
そして、震えた声で「寝言で呼んでたよ。北村先生って…それに、この間だって…」
「違う…私…」
どうにか取り繕うと、背中を向ける夫に手をのばして、そっと背中に触れる。
失いたくない。
ちゃんと、夫婦になりたい。
「あのね…」
私は、ゆっくり、ゆっくり、妄想浮気のことを伝えた。
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