参観日

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参観日

「今日は、家族の人来てて緊張してるなー?」 息子が3年生に進級してから初めての参観日。 新任の北村先生は私と同じ年の35歳。 長身でスタイル抜群なうえに、顔が整っている。 女子生徒からもモテモテだという噂通りのイケメン先生だ。 子供たちは自分の親が来ているか、チラチラと後ろを気にしている。 「わ、将太君のママ来てるよ。今日も可愛い!」 息子のガールフレンドの唯ちゃんが、私を見つけてコソコソと隣の席の将太に耳打ちする。 将太もチラリと振り返って、照れくさそうに笑う。 そんな姿が微笑ましくて、私は2人に小さく手を振った。 「はい、では教科書12ページ開いて…」 国語の授業。 先生は教科書の物語を朗読しながら、生徒の席の間を通って巡回する。 イケメン先生は声までもが素敵で、私のお気に入りの韓国ドラマの主役の吹き替えをしている声優の声にどことなく似ている。 甘くて深い優しい声。 息子の参観に来て、まさかこんな気持ちにさせられるとは思いもよらなかった。 授業がすすみ、「「こんな気持ち」のこんなはどんな気持ちでしょうか。」の問いかけに、将太は張り切って手を挙げていた。 そして、見事に正解し、得意げな顔で私の方を振り返る。 「はい、将太、ドヤ顔しない~」 先生のその一言に、クラスじゅうがどっと沸いた。 そのドヤ顔を目撃した周りの父兄も笑っている。 将太は照れくさそうにしながらも、クラスの笑いの中心になれたことに満更でもないといった顔だ。 先生は、息子のひょうきんな性格をちゃんと理解しているようだった。 おとなしい子にも積極的に声をかけたりしている様子が見えた。1人1人を大切に接している様子が見て取れて、息子を任せる母親として安心した。 授業参観の後は、学級懇談だ。 いつもは決まった数名しか残らないのだが、今日は参加者過去最多を更新。 皆、気持ちは一緒なのだなと思った。
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