17人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
深夜の出来事
足がまた腫れたら嫌なので、この日、お風呂はシャワー程度で済ませた。
なんだかとっても疲れたので、早めに休むことにした。
私たち夫婦の寝室には、シングルベッドが2台。
ベッド同士の間には床頭台があり、そこに読書灯を置いている。
なので、寝るときは別々だ。
3年前にこの家を新築し、将太専用の子供部屋も作った。将太はそれが大変うれしかった様で、引っ越し初日から『自分の部屋で1人で寝る』と言って、川の字から卒業したのだった。
その時から、私たち夫婦もこのスタイルになった。
「ん…」
いつもは、夜中に震度3くらいの地震があったとしても、朝までグッスリの私なのだが、どういうわけか目が覚めた。
足が痛かったせいもあるのかもしれない。
いや、そうじゃなかった。
暗闇の中、何やら、夫の布団がゴソゴソと動いている。
「はぁはぁ…ぅ…あっ…」
ま、まさか!
夫が自慰しているなんて!!
私は、目覚めてしまっていることを悟られないように、息を殺して寝たふりをする。
今までも自分でしていたのかしら?
しているよね、8年間全く無いことなんてあり得ないもの。
でも、隣に私がいるのに…いつも誰を思って…
あれ?私ってば、どうして今まで疑わなかったのだろう?
夫の浮気。
いや、でも、いつも直帰だし、土日は1人で出かけるなんてことないし…
職場の付き合いくらいで飲みにはいくけど…
まさか、その時に?
夫の荒い呼吸を聞きながら、1人想像を巡らす。
息があがって、絶頂を迎えようとしている夫の横で、私はやり場のない怒りと悲しみに襲われる。
「はぁ…あ…あゆむ…うっ…」
夫は絶頂を迎えた。
私の名前を呼んで。
え?
ちょっと待って…
どういうこと?
シュッシュっとティッシュを取る音がして、「はぁ…」とため息が聞こえる。
隣に私がいるのに、1人で、しかも私で抜いたの?
確証もない夫の浮気への怒りも悲しみも、みるみるうちに消え、混乱した。
そんな私を他所に、夫はスースー寝息を立てて眠ってしまった。
私は、朝まで一睡もできなかった。
最初のコメントを投稿しよう!