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夫の態度
あれから1週間。生活は変わらない。
優しい夫と可愛い息子。
一緒に囲む食卓は楽しい。
ただ、ちょっと変わったのは、私の北村先生との妄想不倫の時間が減ったことと、夫が私を3回に1回は「歩夢」と呼ぶようになったこと。
そして、それに気づいた将太が「あゆむ~」って、ふざけて呼ぶようになったこと。
「歩夢、足はどう?」
「もう大分いいみたい。力入れなかったら痛くないかな。」
「そっか、順調で良かった。でも買い物とか大変だろ?必要なものあったら仕事帰りに買ってくるから言って。」
「ありがとう…じゃあ、牛乳と卵お願いしようかな。」
「わかった。」
その日、夫は、言われた通り牛乳と卵と、エクレアを買ってきてくれた。
将太が寝た後、私は入浴を済ませて、入念にスキンケア。
美容オイルに化粧水、乳液。まだ手に残る潤いは首や胸元へとのばす。
どこかの女優さんが「首元までが顔だ」と言っていたから、それが習慣化している。
一通りスキンケアを終え、髪を乾かす。
タオルドライの後、ドライヤーをしようと用意していると、リビングの方から夫がやってきて、「貸して」と私の手から優しくドライヤーを奪い取った。
そして、私のセミロングの髪を優しく指でとかしながら、ドライヤーをあてて乾かしてくれた。
将太が生まれる前だって、こんなことしてくれたことないのに…
鏡越しに、夫が私へしっとりと湿った視線を送っているのが見える。
久々に見る夫の男の顔だった。
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