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告白
私はこの日、夫に抱かれた。
8年ぶりのそれは、少々荒っぽくて、情熱的で、
なんだか知らない男に抱かれているようだった。
夫の腕の中で肌を寄せて、素肌で一緒のシーツに包まり、心地よく余韻に浸る。
しばらくして、夫が口を開く。
「俺さ、歩夢に謝らないといけないことがあるんだ。」
「え?」
「今まで、歩夢を抱かなかったこと…」
緊張で体が強張る。
核心に迫る内容で、それを聞くのはコワくて逃げ出したい気持ちになった。
夫は、そんな私の気持ちを他所に、淡々と続ける。
「将太が生まれて、歩夢は将太のママで…なんか、なんていうか、俺の中で神聖なモノになってたんだよね…きっと。汚しちゃいけないものだって思ったんだ。…できなかったんだ、どうしても…」
「え?」
私は、思いもよらない夫の告白に、戸惑いながらも理解した。
「繊細だよな、俺、笑えるでしょ?」
夫は、フッと鼻を鳴らして笑ったが、その悲しそうな笑顔が救いを求めているように見えた。
「つらかったよね、そんな苦しんでること、気づいてあげられなくてごめんね…」
私は夫の顎に額をすり寄せて、腕にギュッと力を込めて抱きしめた。
優しくて、芯が強い人だから、言えなかったのだろう。
でも、1人で抱え込んで馬鹿な人。
それに、私、ちっとも聖人なんかじゃないのに…
「だから、浮気されても仕方ないと思ってる…」
夫は聞こえるか聞こえないかくらいの、小さく低い声でそう言って、私に背を向けた。
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