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1 与えられた運命
ニーナは田舎町の平凡極まりない家庭に生まれ育った。
容姿は悪くないと自負しているが、特別美しいわけでもない。特に秀でた才能もなければ、人並み外れた頭脳を持っているわけでもない。
一応、幼少期から簡単な魔法を使うことはできたけれど、それもほんの小さな火種を起こすくらいのもの。魔力量も平均的で、とてもではないが魔法使いとして大成できるような器ではない。
自分はこのまま平凡な人生を送っていくのだと思っていた。
大人になったら愛する人と結ばれて幸せな結婚をして、可愛い子供に恵まれる。そんなことを漠然と考えていたのに。
「どうしてこんなことになっちゃったの?」
ニーナは膝を抱えて項垂れてしまう。
この町に生まれた者は十五歳になると神殿へ赴き、そこで自らの運命を知ることになる。『予言書』と呼ばれる書物に神様からの啓示が記されていき、その者がどのような仕事に就くべきか、どのような道を選ぶべきなのかが記される。人々は神様から与えられた運命を指針にして日々を過ごすこととなり、それに従って生きなければならないのだ。
今年の春、十五歳になったニーナも例に漏れず神殿へと足を運んだ。そこで彼女は白紙だったはずのページに文字が浮かび上がるのを見た。
――しかしそこに記されたのは、彼女の望む未来とはかけ離れていたのだ。
「なんで私が、聖女になんかならないといけないの?」
それはこの町において最も尊い存在とされているもので、人々に幸福をもたらすとされている。
聖女は神様に仕え、人々の生活を豊かにするべく尽力する存在である。確かにそれは素晴らしい役目かもしれないが、そもそもニーナは普通に生きていたいだけなのだ。聖女なんていう大層なものになってしまえば、今までのように好き勝手に振る舞うことも、自由に町の外に出ることすら叶わなくなってしまう。
何より聖女は恋愛を禁止され、生涯未婚を貫くことが絶対条件となっている。
ニーナにとってそれは耐え難い運命だ。
なぜなら彼女には、すでに愛する人がいたのだから。
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