よしおくんとケルベロス2

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よしおくんとケルベロス2

 逃げているうちに、よしおくんは、自分が目を閉じていることに気がつきました。  よしおくんは、目を開けようとしましたが、閉じたまま、ピクリとも動きません。 『どうして、目を覚まさないの?』  よしおくんの、おかあさんの声が聞こえます。 『ああ。おつかいなんて、たのむんじゃなかった』  泣いているような声です。よしおくんは、つぶやきました。 「ごめんなさい。ぼく、途中で公園へ行って、遊んでたんだ」  そのとき、目がパッと開きました。  目の前には、よしおくんのおかあさんがいます。 「よしお!」  おかあさんが、泣いています。  ここは、病院でした。  よしおくんは、頭をぶつけて、意識不明だったのです。  精密検査では異常はなかったものの、なかなか目を覚まさず、みんな、心配していました。  よしおくんのおかあさんの後ろでは、看護師たちが話をしています。 「まさか、公園に車が突っ込んでくるなんてねぇ」 「よっぱらい運転だったんだって!」 「お酒は、こわいねぇ」 「公園にいた人の話だと、黒い犬がいて、よしおくんをかばったんだって!」 「それで、大けがをしなくてすんだんだねぇ。犬は、えらいねぇ」 「でも、その後、犬の姿はどこにもなかったんだって!」 「不思議だねぇ」  よしおくんは、おかあさんに話しかけます。 「おかあさん。ぼくね、犬が飼いたい!」 「元気になってからね。でも、どんな犬?」 「頭が3つある、黒い犬! 名前はケルベロス!」 「まぁ。残念だけど、その希望は蹴り飛ばすしかないわね」  看護師さんが、つぶやきます。 「ケルベロス! ケリトバス! って、韻を踏んでるんだねぇ」 「やめて! そんな、失敗したダジャレみたいな解説!」  よしおくんのおかあさんは、顔を赤くして、ちょっとだけ泣きましたとさ。 <おしまい>
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