2.思い出

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2.思い出

 小学生の頃、いつも遊びに行く公園があった。家からは歩いて十五分程。友達と遊具で遊んだり砂遊びをしたり。気付けばいつも日が暮れる寸前で慌てて帰宅したのはいい思い出だ。たまに門限ギリギリになってしまうことがあって、そういう時にだけ通る秘密の近道があった。民家の間を走る細い道で今思えば私道だったのだろう。大人に見つかると怒られるという意識はあったのでいつもは使わない。本当に遅くなってしまった時にだけ大急ぎで通る、そんな道だった。いつもは急いで走り抜けるだけなのだが、その日私は古い一軒家があることに気付いた。青い屋根の古びた家。こんな家あったっけ? と思いつつ目を遣ると玄関脇に丸椅子を置き、お婆さんが座っていた。何やらぶつぶつ呟いている。いつもの私ならすぐ通り過ぎていたに違いないのだがなぜかその時は足を止めお婆さんに近付いた。すると彼女の呟きがハッキリと聞こえてくる。 ――間違えた、間違えた、間違えた。  お婆さんはしきりにそう繰り返していた。何だか不気味な様子にたじろぎつつも、これまた今思えばどうしてそんなことをしたのか理解できないのだが気付けば私はお婆さんに話しかけていた。 「ね、何を間違えたの?」  するとお婆さんはゆっくりと視線をこちらに向けハッとしたように目を丸くした。そして私に向かって……。
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