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4.帰郷
翌週末、私と裕司はその土地とやらを見に行くことにした。両家への挨拶も兼ねて。
「とりあえず土地を見てから俺ん家に行こう。不動産屋には俺の親から話通してあるみたいだから。美奈ん家はその後な」
何だか結婚を決めてから裕司はどんどん強引になっていくような気がしていた。このままだと義両親と同居、なんて話にならないかと内心冷や冷やしている。彼も私もひとりっ子なのでそういう話が出てもおかしくはない。そんな私の気持ちに全く気付かない様子で裕司はどんどん話を進めていく。私は半ば諦めにも似た思いで裕司の言葉に頷いた。
いよいよ両家への挨拶の日。私は少し緊張しつつ電車に揺られる。このままでいいのか、という不安と今更もうどうにもできないという諦めが心の中で同居していた。
「いやぁ、駅前も随分変わっちまったなぁ」
改札から出ると裕司が物珍し気に駅前を見回す。仕事が忙しくてなかなか帰郷できずにいた私と裕司が帰郷するのは三年ぶりだ。たったの三年とはいえ駅前にあった店など結構入れ替わっている。
「じゃあ行くぞ」
裕司は振り向きもせず不動産屋へと向かった。私は「うん」と頷き後を追う。
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