最後の親友

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「くらえ」と孝志は松ぼっくりを投げつけてきた。 「やったな」といい「それなら僕はこれだ」とドングリを何個か握り孝志にむけてそれをいっぺんに投げた。 孝志にドングリがあたる。 「やっぱり松ぼっくりよりもドングリのほうがスピードもでるしよく飛ぶな。」 孝志は僕の投げたドングリを拾い、投げ返してきた。 ブルーシートが掛けられた木の下で僕らは寝っ転がる。 「勝。もうじきに日が暮れて家に帰らないといけなくなる。あーあ、どうして1日ってこんなに短いんだろうな。勝と一緒だと時間があっという間さ。日が暮れなきゃずっとこうして楽しいことをして遊べるのに。」 「何を言ってるんだよ孝志。僕らはまだ小学四年生なんだか。まだこれからもたくさん遊べるんだ。そんなこと考える必要ないよ。」 「たしかに、そうだよな。」 懐かしい記憶。秘密基地やチャンバラ、ドングリ合戦などをした雑木林はもうない。あの時の場所に行くことができなくても思い出として心の中に残っていた。決して忘れることのない記憶。切ない感情が勝を襲う。 「そろそろ行くか。」 勝はベンチから立ち上がり懐かしい公園をあとにした。 目的の場所に向かう道中、かつて通っていた中学校が見えてきた。ここも変わってしまったものだ。三階建てだった校舎も今は四回建て。児童数の増加とともに新校舎となったようだ。 ー・ー・・ ・ー・・・ ・・・ー 「獲れたよ、孝志!」 中学の帰り道、タモ網と籠を持って川に来ていた。僕はタモ網を水中に入れて茂みをガサガサした。タモ網を水中からあげて中を覗くと三センチくらいエビが数匹とヨシノボリが一匹獲れた。もう少し小さめの魚が獲れると思っていたのでヨシノボリが獲れたのは想定外だった。 「凄いじゃないか勝。やったな。」 「エビ、可愛いね。」と言いこちらに近づいてきたのは幸子(さちこ)であった。幸子とは中学校に入ってからよく遊ぶようになった。僕はさっちゃんと呼んでいる。 「ねぇ、ここから海も近いし砂浜に行こうよ。夕焼けが見える時間帯になるし。」 「いいね、さっちゃん。ほら孝志も行くよ。早くしないとおいてくぞ。」 「わかってるよ」と孝志が駆け足で近づいてきた。 茜色の夕焼けが砂浜に座る僕らの影を伸ばす。波の音がいい感じに雰囲気をつくる。 「いつ見ても夕焼けは綺麗だな。」少し眩しそうに目を細めて孝志が言う。 「うん。私もこの景色が好き。学校とかで嫌なことがあってもここにくればそんなことどうでも良くなるもの。」 「孝志、さっちゃん。これからもまたここに来て夕焼けを見ようよ。」 孝志とさっちゃんは二人揃って「もちろん」と言ったのだった。
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