最後の親友

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目的の場所に着いた。綿津見(わたつみ)総合病院。 ここに孝志が入院している。 孝志のいる病室の扉を開けて中に入った。 「やぁ孝志。久しぶり。調子はどうだい?」 「調子ねぇ。なんとも言えないなぁ。」 孝志はベッドに寝っ転がっている。あまり元気が無い。 「ここにくる途中にねいろんなことを思い出したんだよ。とても懐かしかった。」 興味があるのか孝志がくいついた。「どんなことをだい?」 「それはもちろん子供の頃のことをさ。雑木林や川でガサガサをやったこととかをね。」 思い出したかのイキイキと孝志が語り出した。 「ガサガサで一番の大物はヨシノボリだったね。捕まえたのはあれっきりでそれからは小魚やエビしか捕まえられなかった。」 「そうだね、でもエビがたくさん獲れてさっちゃんは大喜びだった。」 「そのあとぐらいだったかな、釣りにハマりだしたのは。」 「あぁ、(まさる)ったら釣りが下手でなかなか釣れないものだからよく拗ねていたっけな。」 「孝志が上手すぎたんだよ。」 そう言うと孝志は少し照れていた。孝志が照れるところなんて久しぶりに見た。 病室の窓からは中学時代よく三人で夕焼けを見に行った砂浜が見える。 「覚えているかい、孝志。よく三人で夕焼けを見に行ったことを。」 「もちろん。忘れるはずないさ。この病室からは天気がいい限り毎日でもみることができる。でも、少し寂しさを感じるけどね。」 もう、三人で夕焼けを見ることはできない。十年前にさっちゃんは車に轢かれて死んだ。横断歩道を渡っている途中に信号無視をした車が突っ込んだのだ。即死だったそう。 「事故がなければ今も三人で一緒にいられたのかな。」 「そうだろうね。でもねさっちゃんならきっと今も私たちのそばにいるさ。だからそんな暗い顔をしないでくれよ。」 少し間をおいて孝志が言う。 「勝、わかっているんだろ。もう俺の命もそう長くないことを。心配なんだ。もし死んでしまえば勝が一人になってしまうんじゃないかと。」 「小さい頃からよく遊んだ友達はみんな死んでしまった。でもね最後に残ったのは大切な親友、孝志さ。外、見てみなよ。」 夕焼けが心に染みる。「綺麗だ」穏やかな表情で孝志が言う。 「たしかに一人になってしまうかもしれない。でもね毎日欠かさずにこれからも夕焼けを見に行くさ。だからその時は一人にならないようにそばにいてくれよな。」
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