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一
また、今日が終わった。
僕はクラスメートに挨拶をして、そそくさと校舎を出て、校門へ向かった。
校門の近くの大きな桜の木の下で僕を待っている笑美が、僕に気付いて手を振った。僕は手を振りながら、笑って駆け寄った。
「ごめん、お待たせ」
「ううん、私も今終わったところ」
「そっか。じゃあ、行こっか」
僕は笑美の手をとって、西へ歩いた。すると、笑美が無言で僕の袖を握った。振り向くと、彼女は笑って言った。
「お腹空いちゃった、コンビニ寄らない?」
「……いいよ」
僕は笑って返事をした。恋人同士は、仲良く一緒に色んな所に行くものだ。断ってはならないと友人達の話から学んでいた為、僕は彼女の買い物につき合った。
「はい。これ」
笑美は僕に、半分の肉まんを差し出した。
「いいの?」
「うん。いつもつき合ってくれるお礼」
「それなら、僕も。いつも一緒にいてくれるお礼」
僕はいつか渡そうと買っておいた安いネックレスの入った袋を差し出した。笑美はそれを受けとると、袋の中のネックレスを持って笑った。
「きれい……嬉しい」
「よかった」
僕達は肉まんを食べ終え、また歩きだした。
横断歩道の信号を待っていると、すぐ近くで男の人が怒鳴った。
「危ないっ」
ふと隣を見ると、工事中の建物の三階部分から、鉄の棒のようなものが降ってきた。僕は笑美を突き飛ばした。
鉄の棒が全て落ち、落ち着くと僕は周囲を見た。笑美は無事だった。しかし、僕を見て驚いていた。
「にっ、兄ちゃん、大丈……ひっ」
男の人は、僕を見ると腰を抜かした。僕は足元を見た。すると、僕の身体から流れたのであろう青い血液がそこについていた。
僕は一目散にその場から逃げた。
町から離れた、人気のない林の奥に入った僕は、携帯電話を見た。
もうここにはいられない。そう悟った僕は、笑美に電話をした。
『もしもし?』
笑美は出てくれた。それが嬉しくて、僕は笑って言った。
「もしもし、僕だよ」
『うん。けが、大丈夫?』
「大丈夫……あのさ、笑美」
言うしかない。あれを見られては、伝えてあげるべきだ。そうわかっているのに、告げようとすると変に緊張した。
『ん?』
笑美の声が聞こえ、深呼吸をした僕は、ゆっくり話した。
「今日のことでわかったと思うけど……僕は人間じゃない。人造人間、ってものなんだ」
『え?』
「僕は消えるから……だから、今までありがとう」
じゃあね。と言い切ったのと同時に、僕の身体の中にある爆弾のスイッチが入った音がした。
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