転生少女小野寺涙の告白

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 わたしは小野寺涙。どこにでもいる普通の女の子……と言いたいところだが、名前からもう普通じゃあない。  キラキラネームつけたがりの親の下に生まれてしまったばかりに、『涙』と書いて『ティア』と読む、新学期に名簿を開いた教師が必ず眉根を寄せる名前にされてしまった。 「えーと、おのでら……るい?」 「ティア、です……」  このやりとりを、今までの人生で何回行ってきた事か。  更に普通でない事に、わたしは転生者である。頭がおかしい訳ではない。今時流行りの異世界転生を逆にかました訳でもない。正真正銘、二十世紀の少女漫画でよくあった、前世の記憶を持つ、生まれ変わりである。  それだけなら良かった。だが、神様は何たる意地悪か。私の前世のアティアという女性は、いわゆる悪役(ヴィラン)だったのだ。  愛する幼馴染との婚姻の日、その相手が魔王として覚醒し全てを失ったところに、『お前は伝説の勇者の末裔だ』と告げられ、愛する人と殺し合う運命を背負った少女……ではなく、彼女の世話係兼護衛として傍づく侍女。それがわたし、というかアティアだ。  だけど、それは表向きの役目。アティアは魔族に妹を人質に取られ、勇者の少女を抹殺するよう脅されていたのだ。  笑顔で勇者に接しながら、背中に刃を隠し続け、ある時点で素顔を明かしたのだが、勇者にあえなく敗れ、崖から身を投げたところで、わたしの前世の記憶は終わっている。
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