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葬儀から半日も経っていない夕刻、秀作の携帯が鳴った。
骨と自分しかいない格安ホテルの一室が、久々に音を取り戻した。
それにしてもしつこい。
画面を見ると、「デスク柳田」の文字。
しばらくふて寝しているうちに流石に静かにはなったが、留守番電話に罵声が残されていた。
「いつまでもさぼるな! さっさと出てこい! 」
ここ最近の秀作と言えば、ねぐらとしている部屋の窓に取り付けられたカーテンを開けたり閉めたりして、影の形が変わるのを、ぼんやりと眺めているだけだった。
「理不尽に怒鳴ることで、奴の腹の虫が収まるなら、人助けでもしてやるか」と、血迷った考えが浮かぶ。
秀作は、奈落の底に突き落とされた精神のまま、三日ぶりに出勤することにした。
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