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「焼く手間が省けてよかったなぁ」
柳田の第一声は、それだった。
一瞬にして、四十六人いるフロアが凍り付く。
秀作が視線を向けるや否や、「お前みたいな奴でも、頭数がいないと親父がうるさいからな」と吐き捨て、自室へと戻っていった。
ドアが閉まる音を確認してから、隣の席に座る松木が話しかけてくる。
「あの言いぐさはないっすよね。陽奈子ちゃんに嫌われたからって」
秀作はパソコンをまっすぐ見つめたまま、「まぁ、今日は暑いからな。あいつの冴えない冗談で、涼でもとらせてもらおう」と皮肉で返した。
実のところ、秀作にとっては、柳田も同僚も同列の存在だった。
所詮、同僚たちはいずれにも良く思われたいという蝙蝠。
偽善者にすぎない。
笑顔の裏で、「不幸な他人に群がる蛾が」と小さく毒づいた。
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