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 嫌がらせが露骨になったのは、二年前からだった。  たまたま陽奈子と時間が重なり、職場まで一緒に歩いていた朝のこと。  入り口あたりで柳田と鉢合わせた。  丁寧に挨拶をする陽奈子の話も聞かず、柳田は肩を抱き寄せ、「高校卒業したら、うちでお茶くみとかどう? 」と誘ってきたのだった。  現社長の息子である柳田は、高級スーツと外車をステータスだと鼻にかける、ぼんくらだ。  若干二十五歳でデスクに就いたことで、勘違いに拍車がかかり、誰にも暴走を止められない存在となっていた。  しかし、陽奈子も秀作の娘、筋金入りの頑固者だ。  秀作が割って入る前に、肩に回された腕を払いのけ、「結構です」とぶっきらぼうに断った。  入り口は同僚の出社ラッシュで、見事に笑い者となったのだ。  このことが逆鱗に触れ、書く記事すべてが「秀作じゃなくて駄作だ」と、こき下ろされるようになった。  度量の狭さが身に染みた秀作は、無抵抗を決め込むことにした。
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