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 バンッと机を叩く音で、目が覚める。  どうやら何度も呼ばれていたらしい。  秀作は「いよいよ蝉の鳴き声が目立ってきたな」などと、窓の外を眺めて、一休みしているところだった。  「ぼさっとするな! お前にぴったりの仕事を用意してやったぞ」  柳田は机から手を離すと、その上に腰を掛け、ふんぞり返った。  そして、邪悪な笑みを浮かべて、声を張り上げた。  「コラム、書けよ。娘が死んだ心境の」  いつもなら静まり返るフロアが、流石にざわついた。  娘が死んだ…何だって。  何を書けと。  思考が停止し、唖然とする秀作に、「だから、コラムだよ、コラム! さっさとしろよ。駄作が」と怒鳴りつけ、そのまま外へと出て行った。  「先輩! 断った方がいいっすよ」と松木が焦ったように促してきたが、秀作はただ黙っていた。  言いなりになるつもりはない。  実は、あの夜からずっと引っかかっていることがあった。  親心がそうさせるのではない。  長年かけて培ってきた記者の臭覚が、秀作の執念をたぎらせるのだった。
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