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あちらでは香多お兄ちゃんと瑠璃お兄ちゃんの勝負が始まった。
「あっち向いてホイ!」
と瑠璃お兄ちゃんが仕掛けて、右手で右を指しながら左手で左を指したと思ったら、右手の親指が上を指して左手の親指が下を指している。
「え? え?」
香多お兄ちゃんは上を見た。
「はい! 俺の勝ち!」
瑠璃お兄ちゃん……卑怯だ。
「次はタッくんだな……」
「瑠璃くん頑張れーー!」
今、気付いたけど、薫蘭風お姉ちゃん、最初っから参加してない……。
「にょんたんず、勝負!」
なんか、ぼうっと見ていたら瑞希先生に勝負を仕掛けられた。
「瑞希先生、あんまり変な勝負は……」
不安でつい言ってしまう。
「可愛い教え子に変なことさせないやい…」
「じゃあ何を?」
「かけっこ! はしまで先についたほうが勝ち!」
瑞希先生が言った瞬間、フーフーが全速力で駆けてはしについた。
「はい! 勝ち!」
「早いよ!」
僕と瑞希先生の声が重なった。でも僕らの勝ちだ。
瑠璃お兄ちゃんとタッくんの勝負は?
「はい。私の勝ち。瑠璃は勉強苦手だもんね」
「くそーー!」
どうやら『完璧』って漢字を書く勝負だったらしいんだけど、瑠璃お兄ちゃんは『完壁』と書いたらしい。
「じゃ、翡翠、俺らも勝負しようぜ。じゃんけんホイ!」
フーフーが突然叫んで僕はチョキを出す。フーフーとスイスイはパーだった。
「じゃ、翡翠頑張って」
スイスイがホッとしている。今になって、あまり関わりたくなかったのがありありと分かる。
「では翡翠くん、勝負だね」
タッくんが僕に声をかける。やんなきゃ駄目なのか。
「何、算数の問題だ。ちなみに瑠璃くんはこれで私に負けた。それでもいいかい?」
僕はうんと頷く。
「五秒以内に答えるんだ」
「9999×1000は?」
「え? 999万9千?」
「負けたーー!? しかも即答!?」
「あーあ。タッくん、翡翠は勉強は得意なんだよ……」
結局、僕が勝ってしまった……。
ひな壇の上でお内裏様の格好をした伊織先生がニヤけている。
「はぁはぁ。翡翠くん信じていたよ……。翡翠くんがお雛様なんて、先生頑張って良かったぁ……」
めちゃくちゃ近づきたくない。行かなきゃならないんだろうか?
「翡翠、無理するな! あそこは地獄だぞ!」
勝って地獄って何? 瑠璃お兄ちゃん……。
「翡翠くん、私変わろっか?
やだけど」
うた先生、どこ行ってたの? 何となく、みんな、お内裏様が伊織先生だから逃げた気がするのだけど……。
「ううう。みんな酷いよ……」
僕は地獄へと一歩踏み出した。
四月に続く前に瑞希先生のばーすでぃちょっと前に続くよ!
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