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最初に行われるのは、お内裏様争奪戦。
「よーいどん! はい、大、勝負するぞ!」
伊織先生は自分で言っていきなり大さんに勝負を仕掛けた。
「俺かぁ……。勝負の内容は?」
「ふふふ。この一年泣かせた女の子の数だ!」
伊織先生が言った瞬間、瑠璃お兄ちゃんが僕の耳を塞ぎ、良お兄ちゃんがフーフーの耳を塞ぎ、香多お兄ちゃんがスイスイの耳を塞いだ。
何言っているか分からなかったけど、大さんは泣きながら何処かに走って消えていった。
「はい。勝ちーー!」
お兄ちゃんたちが手を外して、伊織先生が勝ったのが分かった。
お父さんと徹さんの勝負はお父さんが勝った。バレンタインにもらったチョコの数のようだった。お父さん、何気に人気だもんな。
「ふっ。親父殿、ケリをつけるときが来たようだな……。いつかは来ると思っていたよ」
「ふっ。伊織先生、まさかこんな日が来るとはな……」
みんなが冷めた目で二人を見ている。いや、にょんたんずはそんな目で見ていないけど。
「伊織先生、勝負の内容は?」
「ふふふ! 持っている瑠璃の写真の数だ!」
「負けませぬ! 私は三万枚持ってます!」
「ははは! ぬかったな! 写真家の私がそれだけで済むはずがないだろう! 私は八万枚持っている!」
みんなの冷めた目が二人を襲う。僕ら、にょんたんずも呆れた。
「くっ! まさか負けるとは……」
「親父……、写真家に写真の数で勝てると思うなよ……。どっちも持っている数、気味悪いけど……」
瑠璃お兄ちゃんはちょっとオブラートに包むこと覚えたほうがいいと思う。直球すぎるよ。
お内裏様は伊織先生に決定して、また伊織先生のよーいどんが叫ばれた。
「げたんわくん、勝負!」
瑠璃お兄ちゃんがげたんわお兄ちゃんに勝負を挑む。
「勝負の内容は?」
「どっちがセクシーなポーズをできるかだ! 判定は伊織先生にしてもらう!」
僕はあんぐりと口を開ける。瑠璃お兄ちゃん、何言ってんの!? 僕は何も言えずに勝負が始まる。瑠璃お兄ちゃんはいきなり肩を出した。
お父さんが突然鼻血を出した。
「瑠璃の勝ちだ!」
げたんわお兄ちゃんが何もしないうちに瑠璃お兄ちゃんの勝利が決定した……。瑠璃お兄ちゃん……、いつもこんなことやってんの?
「翡翠、俺ら不利だからにょんたんずで勝負挑もうぜ!」
「そ、そうだね……」
フーフーの誘いには乗ったけど、他のにょたチョコ男子もほんもの女子も変な勝負ばかりしている。
「五丁目さん、にらめっこしましょ! あっぷっぷ!」
タッくんは突然に五丁目さんににらめっこ勝負を仕掛けるが五丁目さんは突然ニコリと笑う。
「タッくん、勝ちは譲りましょう。伊織先生のお内裏様の横には行きたくありません」
五丁目さん、辛辣だ!
あちらでは、良お兄ちゃんと香多お兄ちゃんの勝負。
「良くん、あざとさ勝負で!」
「ごめん……。勝てる気しない……」
良お兄ちゃん、あっさり負けた!?
「翡翠、この勝負、仕掛けたほうが有利みたい。内容は何でもいいみたいだし」
スイスイは冷静に観察している。今のとこ、僕らに勝負を仕掛けて来る人はいない。
「束やん、勝負!」
瑞希先生が束砂お姉ちゃんに勝負を仕掛けている。
「あ、私いいです。見てるほうが楽しいし、私がデザインしたお雛様衣装は私が着るためじゃないので」
「束やんのいけずーー!」
結構、勝負を放棄する人いるなぁ。
「はろんさん……、一緒にリタイアしない?」
「そうしましょう。私らは、にょたチョコ男子を愛でたいのであって争いたい訳ではないので」
はろんお姉ちゃんと更紗お姉ちゃん、あっさりリタイア。だと思ったらアッキーにマッキーもリタイアした。
「伊織先生の隣には行きたいけど、小学生と争いたくないもんねぇ」
「ねーー」
大人だ……。大人なのかな?
「あーー!」
僕はつい声をあげた。
「僕、そんなキャラじゃないのに、頭の中、ツッコミばかりになるーー!」
「翡翠! 落ち着け! 俺らもそうだから!」
フーフーとスイスイになだめられて、何とか息を整える。
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