Dearest Friend

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 彼とは日本の大阪に来てはじめてアルバイトをした工場で出会った。  工場で働いているのは外国人が多く、大半はベトナム人とネパール人で、台湾人はワタクシ一人だった。言葉の壁は厚い。外国人にも日本人にも馴染めず、いつも一人だった。それで目をつけられたのだろう。不良っぽい四人組の日本人にいじめられるようになった。最初は言葉でからかう程度だったものが、日に日にエスカレートした。  ある日、彼らはワタクシを工場の裏へ連れて行くと、落ちていた廃材や鉄くずで殴り始めた。人差し指を振って「ドルだけ~」と言えと命令されたのを断ったのが気に食わないらしかった。ドル高を嘆くジョークなのか、ドルしか使えないというジョークなのか、面白いとは思えない。  一人称がワタクシなのもお気に召さないようだ。日本語を勉強しはじめたころに、目上の人や自分よりも立場が上の人に使う上品な言い方だと知り、気に入って使っていたのに。 『オカマ』のガイジンが気持ち悪いと彼らは言った。炊飯器のことではなく、日本人は女装した男性や女性の心を持った男性やゲイを『オカマ』や『オネエ』と揶揄するようだった。  両親は厳しい人だったが、手をあげられたことはない。殴られるという行為に免疫がなかった。背中やお腹に鈍器が当たると想像を絶する痛みが走る。痛みを堪えて丸くなっている姿を見て、彼らは「芋虫」だと笑った。
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