Dearest Friend

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 けんかになるのかと思いきや、大和は四人を突き飛ばすだけで、殴ることはなかった。何度突き飛ばしてもゾンビのように起き上がるので、大和は途中で「走れ!」と言ってワタクシの腕を掴んだ。体中が痛かったけれど、必死に走った。力の強い犬に引っ張られて散歩しているみたいだった。  クレイジーなジョークではなく、大和は本当にワタクシをクレープ屋さんへ連れて行った。  怖い顔に似合わずひときわ甘そうなクレープを注文すると、ワタクシに食べないのかと聞いた。五百円ほどのクレープは決して高くはないのだろうが、週に二十八時間しか働けない外国人留学生にとっては高価な食べ物だったので、素直にそう告げた。 「水くさいこと言うなよ。俺が出したるやん」 「どうしてですか? 今日はじめて会いました」  日本の水は臭くないのにと思いながら、本来ならお礼される側の彼が、どうして奢ってくれるのか考えていた。 「でも、一緒の工場で働いてるやん」  同じ職場の仲間だという意味だろうか。答えはわからなかったが、お言葉に甘えた。  クレープを頬張る姿が意外過ぎて、ワタクシは未確認生物を見つけた気持ちでじっと観察していた。 「あの、Creamついてるですよ」 「え? ああ、ありがとう」  唇の端についていたクリームを彼はぺろっと舌で舐めた。僅かに口元が綻んだように見えて、根拠はないけど彼は善い人なんだろうと直感した。昔から勘は鋭い方だ。自分を信じることにする。
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