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ゆうれいの願い事 11
あーあ、なんだかなあ。
俺もさ、なんか気の利いた、上手いこと言えたらいいんだけど。
よくわかんねえんだよな。
何か一言、関係性が変わるようなことを、と思って口を開きかけたけれど、やっぱり何も思いつかなかったので言うのをやめた。
どうしようもなく情けなくて、額にくっつけていた唇を、薄くてカサついてる琉生の唇に持っていく。
いつもとは違う、軽い、優しいだけのキスをして、名残惜しいけれど舌をひっこめて離れた。
そのキスには、俺が琉生に望むたった一つの願い事と、ちょっとばっかし真剣な、そんな想いみたいなのを込めてみたつもりだった。
通じたら嬉しいなあ、って、乙女ちっくなことを思って、自分で自分の行為にサブイボが立って吹き出した。
なすがままだった琉生は、すっごく不可解なものを見る目で俺を見ている。
低い声で、気色悪い、と呟かれ、特に何にも気がつきませんでした、みたいな様子で前髪を自分で整える。
「あ、そーだ、なあ、朔夜」
「…なーに」
膨れて返事をしたけれど、琉生は清々しいまでに無邪気に変なことを言い出す。
「おまえさ、朔夜、毎日、丑三つ時まで起きてろよ」
「…なんの話?」
「俺が先に死んだらって話」
「…まだ続いてたの、この話題」
「思ったんだけど。俺が死んだら、朔夜は丑三つ時まで起きてて。って言う、提案」
「丑三つ時ってなんだっけ?」
「ゆうれいが出る時間のこと」
「あー、それか。聞いたことあるわ」
「丑三つ時まで毎日起きてろ」
「なんでだよ、真夜中じゃなかった?」
「やっぱさ、俺が先に死ぬから。そしたら朔夜は、丑三つ時まで毎晩起きてて、俺のことを待ってろって言ってんの」
俺からはじめた、とんちんかんな話に、琉生もとんでもなくズレた回答を用意したようで、それを惜しげもなく披露してくる。
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