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ゆうれいの願い事 13
もうさ、俺が体力とか性欲とかなくなってさ、琉生はまあ元からあんのかねえのかわかんねえからいいとして、そういう、そのくらいの年になっても、同じ気持ちでいたら、やっと言おっかな。
二人とも、これからちゃんと人生ってやつを生きねえといけねえわけだしな。
終わる頃がいいんだろ、きっと。
全部やり尽くした後くらい、そんくらいの時に言うのが、いいんじゃねえかなって気がした。
「じじいんなった時にさ」
「誰がだよ」
「俺とか琉生が」
「また、めちゃくちゃ先の話するな、朔夜」
「そん時に、告んね」
「あー、そゆことか」
「それまで幽霊はナシでよろしく」
「さあ?人生、何が起こるかわかんねえから」
このひねくれ者めが。
たまには俺の欲しい答えをくれたって、いいんじゃないだろうか。
せっかく体はぴったりと隙間なく合わさっていると言うのに、気持ちはぴったりとは合わさったりしない。
別々の人間だから、そりゃあそれが普通なんだろうけれど、こうも頑なに天邪鬼だと俺だって拗ねるからな、いい加減。
「じゃあもういい。今告っとく、死ぬ前に」
「そうしとけ」
「え。いいの?」
「いいよ。まだしばらくは生きてるだろうし」
「おまえ、人生謳歌しないの?」
「するけど?」
「白い壁の赤い屋根の二階建て一軒家と、手料理得意な奥さんと、でっかい犬も飼って子供は三人、とかやんねえの?」
「おまえ、そんなんが欲しいの」
「いや俺がじゃなくて、琉生がだよ」
最初に抱いていたこの先の予感とは、どうやら違うことになりそうな雰囲気に、俺は思わず琉生のことをさらにぎゅうぎゅうと強く抱き寄せた。
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