7人が本棚に入れています
本棚に追加
セクシー忍者参上
真夏の太陽が顔を出し、ぼんやりと東の空が明るくなり始めた。
小鳥のさえずる音にまざって不意に『ドンドンドン』とドアを叩く音が響いてきた。
激しくやかましい音だ。
寝室で寝ていたボクは布団の中で顔をしかめた。
「はァ、またモンスターペアレンツの海部ツヤかよ。ぬうゥ勘弁してくれよ。今、何時だと思ってるんだ」
ボクはベッドの脇にある時計を確認した。
「はァ、冗談じゃない。まだ五時前じゃん。マジか……」
頭の痛い問題だ。
昨夜も遅くまで海部ツヤの屋敷でクレームに対応していた。彼女はアラサーで妖艶な美女だが、ひと晩じゅう相手をさせられ参ってしまう。ボクは贔屓のホストではないのだ。
なにしろボクのクラスは問題児ばかりで放課後も対応に大忙しだ。
下手をすると教え子の授業よりもクレーム処理の方が長い。どれだけ時間外労働をさせるつもりだ。
深夜、やっと解放され倒れ込むようにベッドで寝ていた。ようやくつかの間の休息だ。
だがせっかくの安眠を邪魔するみたいに、またドンドンと玄関のドアが叩かれた。
「ッたく、わかりましたよ。うるさいな」
小声で文句を言いながら仕方なく玄関へ急いだ。帰る気はないみたいだ。
「ハイ、なんでしょうか?」どうせ海部ツヤだと思い、ドアスコープで確かめる事なくカギに手を伸ばした。
「そんなに叩かなくても今、開けますから」
寝ぼけ眼で玄関のドアを開けた。
「えッえ、え、えェ……?」
玄関にはビックリするくらい可笑しな恰好をした美少女が立っていた。
見た目は女子高校生くらいだろうか。とにかく圧倒的な美少女だ。大きな瞳に長い黒髪をポニーテールにしていた。だがこの際、美少女かどうかは問題ではない。
彼女のあり得ない恰好の方が問題だ。
「うッううゥ、マジか?」思わずボクは目を疑ってしまった。
いわゆる忍者のコスチュームで、しかもかなり際どいセクシーなコスプレだ。ヤケに肌の露出が激しい。どちらかと言えば、水着と変わらないくらいだ。
「やァやァ、セクシー忍者、華麗に参上!」
いきなり彼女は威勢よく啖呵をきった。
「えッえ、ええェ……?」なんだって。
セクシー忍者ってなんなんだ。
「いざ尋常に勝負しろ」
背負った刀剣の柄を握りボクを睨んだ。
最初のコメントを投稿しよう!