セクシー道場破り

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セクシー道場破り

「いざ尋常に勝負しろ」  背負った刀剣の柄を握ってボクを睨んだ。  獲物を狙う肉食獣みたいに眼光が鋭い。 「な、な、何を言ってるんですか。どうしてボクがあなたと勝負しなきゃならないんですか?」  とっさにボクは身を引いて防御態勢を敷いた。顔はアイドルみたいに可愛らしいが真剣だった場合、シャレにならない。 「フフゥン、問答無用」  セクシー忍者は余裕の笑みを浮かべ玄関に上がり込んだ。妖しく目を光らせ徐々に間合いを詰めてきた。 「いやいや、そんな問答無用って、どういうことでしょうか?」  香水の匂いだろうか。痺れるような甘い香りにボクはめまいを起こしそうだ。  なおも美少女はボクを睨んだまま啖呵を切った。 「やァやァ、道場破りだ。いざ尋常に勝負しろ」 「えェ、道場破り……?」マジか。  この令和の時代に道場破りなんて。  正気の沙汰なのだろうか。  確かにボクの家は、一見すると武家屋敷のような(たたず)まいだが道場ではない。  古くて無駄に広い和風の家屋だ。 「うッううゥ……」  しかしなんて恰好をしているだ。朝っぱらから信じられないようなコスチュームだ。  歳の頃は女子高校生くらいだろう。アニメから飛び出して来たような美少女だ。  真夏なので暑いのはわかるが露出が激しい。ほぼ水着と変わらないコスチュームだ。  忍者みたいな恰好だがセクシーな衣裳だ。ビキニタイプで、胸元は鎖カタビラのような装備をしていた。しかも豊かな胸の膨らみが今にも飛び出しそうだ。 「あ、あのォ、勝負なんて無茶言わないでください。ハロウィンはまだまだ先ですよ」  ボクは顔の前で何度も両手を振り、真剣勝負を拒否した。こんなことでケガなどしたくない。 「構わん。道場破りだ。いさぎよく立ち会え」 「いやァ、立ち会えって。なんですか。怖いですよ」  もしかしたらお菓子を上げれば帰ってくれるのだろうか。 「我が名は、セクシー忍者伊賀の蘭丸子じゃ」 「えェ、なんですって。伊賀のセクシー忍者って何ですか?」  あきれるほどツッコミどころ満載だ。  セクシー忍者なんて、どこかのAVの企画みたいだ。それも伊賀忍者なんて。  だが、どこからツッコめば良いのだろう。それともまだボクは悪い夢でも見ているのだろうか。ためしに頬をつねってみた。 「痛ッ」どうやら夢ではなさそうだ。  では目の前のこの忍者の恰好をした美少女は何なんだろう。 「聞いて驚くな。お蘭こそ、どんなセクシーな忍法も使えるという千年にひとりの逸材じゃ」 「いやいや、自分で逸材とか言わないでくださいよ。新日の棚橋弘至ですか?」  どんだけ自画自賛する気だ。 「セクシー忍者のなかのエリートじゃ。いざ尋常に勝負しろ」 「いやいやァ、ちょっと落ち着いて話し合いましょう。まず刀剣(カタナ)から手を離して。お願いですから、ちょっと待ってください」  ボクは彼女を抑えるのに必死だ。
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