『ソープの島』

1/1
前へ
/11ページ
次へ

『ソープの島』

 リビングのソファで(くつろ)ぎながらお蘭はボクにアゴで命じた。 「お茶菓子のスイーツを用意しなさい」  まるで召使いに言うような口ぶりだ。 「えェ、こんな朝っぱらからスイーツですか?」 「無礼者か。やはりお主は甲賀の忍びだな」 「いやいやァ、甲賀忍者のワケがないでしょ」  なにを言い出すんだ。 「伊賀のセクシー忍者が参ったら、漏れなく甘いスイーツとコーヒーを振る舞うのが行儀作法だろう」 「どんな行儀作法なんですか。忍者なのにスイーツなんて洋風なものを食べるんですか?」 「当たり前だ。伊賀のセクシー忍者は漏れなくスイーツが大好物なのじゃ。ひと晩に十四個食ったことがある」 「十四個も。それじゃブクブク太るんじゃないですか?」 「ぬゥ、太るはずはない。お蘭は伊賀のセクシー忍者だ。常に体重管理を(おこた)らずセクシーを極めてきたのじゃ」 「何なんですか。それは。セクシー忍者ってオスカーのモデルなの?」 「もはやセクシー忍者の里、『泡の島』にはお蘭以上にセクシーな忍者は存在しない」 「な、なんなんですか。『泡の島』って? まさかソープランドですか」 「違う。『ソープの(ランド)』だ。ありきたりなソープランドとは、まったく異次元の島だ。殿方の夢と希望にあふれたファンタジーな島なんじゃ!」 「どんな夢と希望の島なんですか?」 「お蘭は、幼少のみぎりより伊賀のセクシー忍者として『ソープのランド』で四十八手のあらゆる体位を伝授されたのじゃ」 「どんな体位なんですか?」  なんとなく聞いているだけで恐ろしくなってきた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加