今宵は満月

2/2
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/74ページ
ジッと見つめ過ぎたのか 『そんなに見つめるな』 と言わててしまう。 「あ…すみません。あの…お名前は?」 『俺は、さっき会ったばかりの信用ねぇ奴に名前を教えるほど優しくねぇ』 グサリとその言葉が胸に刺さる。 いつもそう… いつも… 『だが、お前に興味はある』 「え?」 『興味はある。こんな時間にボロボロになってココに来る女をな』 男の人はニヤリと笑う。 その姿さえ、魅力的で 「っ…友達から…いえ…話し相手からなりませんか?」 自分に興味を持ってくれたこの人と、もっとお話がしたいと思う。 『大罪人。とでも言っておいてやるよ』 「あの…どういう…?」 『じゃな』 男の人…大罪人さんは、そっと消えるように去って行く。 なんだか去って行くのが寂しく感じる。 でも今は忘れないように胸に手を置いて名前を繰り返した。 いつか本当の名前が知れた時が、きっと…
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!