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暴漢
翌日、悲鳴を聞いて目が覚めた。
まだ目がショボショボしていて、頭に靄がかかっている。
昨日の疲れが抜けきっていないようだ。
「あれ、レックスさん」
もぬけの殻だった。
外に出てみると、3人の男と対峙するレックスの姿を認めた。
「ガラク!
出てくるな」
男から視線を外さずに、物陰に隠れている。
ただならぬ雰囲気を察知したガラクは、寝室へ戻りベレッタを持って玄関から外を窺う。
拳銃など扱ったことがないので、映画で見たように持っているだけだった。
「レックス!
ゼツが死んだというのは本当か!
奴を殺して名を上げようと思っていたのに ───」
ガラクは耳を疑った。
「ゼツ ───」
母の名を呼んだのだろうか。
名を上げるとは ───
にらみ合いはしばらく続いた。
1㎏にも満たない拳銃でも、ずっと構えていると手が重くなってくる。
銃声が響く。
1人が発砲したのだ。
続けて2発。
1発は玄関に向けられた。
至近距離で壁が爆ぜる!
「きゃっ!」
驚いて尻もちをついた。
背後で物音がする。
恐怖のあまり、身体が硬直して振り向けない。
後ろから前腕部で顎をかち上げ、首を絞められた。
「ぐううう……」
男は容赦なく前腕で顎を締め上げてくる。
このままでは首をへし折られる!
「へっへっへ……
こんな小娘を隠してやがったのか」
男の腕を掴み、外そうとしたがまったく歯が立たなかった。
意識が段々と遠のき、小便を漏らす。
「ああ、かわいいお姉さん。
すまねえなあ。
伝説の殺し屋レックスが睨んでちゃあ、ゆっくり遊んでられねえんだ。
死んでくれや」
視界が真っ白になった。
「ああ、私は死ぬんだ ───」
涎と涙と鼻水も垂れ流し、哀れな姿になった。
ふわふわとした意識の中で、微かに銃声が聞こえた ───
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