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暗黒街の死神
首にシップを貼り包帯を巻いた痛々しい姿だったが、すぐに歩いて帰れるようになった。
レックスの肩を借りながら、寝室へ横になった。
「いいかい。
落ち着いて聞いてくれ。
ゼツは私と同じ殺し屋だった。
主にマフィアの幹部が標的だ。
暗黒街の死神・ゼツと言えば、そこらのチンピラは皆震え上がる。
だから、家族を守るために命を捨てたのだ ───」
ガラクは無表情だった。
薄々は気づいていた。
昨日の状況から容易に推測できる。
だが、黙っているレックスを見て生半可ではないと思っていた。
「ガラク。
これだけは知っておいてほしい。
ゼツは君を世界中の誰よりも愛している。
君を守るためなら、笑いながら命を投げ出すのだ」
頭の中は、不思議なほどスッキリしている。
いつも豪快に笑っていた母。
愛しているのはガラクも一緒だった。
「エアーガンで、訓練するんでしたよね。
明日からお願いします。
私、母が見た世界を少しでも知りたいんです。
もう、隠さないでください ───」
目頭に涙がにじんだ。
レックスの目は優しかった。
「血は争えないな。
気丈な娘だよ。
ゼツを彷彿とさせる。
じゃあ、今夜はゆっくり休みなさい」
寝室の電灯が消えると、闇が世界を支配した。
心に闇を抱えていた母。
毎日葛藤しながら笑っていたのだ。
罪の意識にさいなまれていたのだ。
生きているうちに、真実を語って欲しかった。
私も母のように強くなりたい。
会いたくてたまらなくなった。
了
この物語はフィクションです
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