この恋の終わりに、リボンをかけて

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彼女になりたい、と思っていたこともあった。蛍の重すぎる愛が欲しいと願ったこと、数知れず。 ただ、私は気づいてしまったのだ。 蛍は最後には私のところに帰ってくる。うるうる涙を浮かべながら「和歌〜」と甘えた声で来てくれる。 どうせ蛍は誰と付き合っても長続きしない。この仲良しな女友達というポジションは私しか手に入れられない特別なものなのではないか。 ……だったら、焦らなくてもいいか。 そんなふうに言い訳していたら、友達のままあっという間に2年も経って大学2年生になっていた。 その間も蛍には何人も彼女ができて、フラれれば私のところに戻ってきて。いつかは私が1番だと気がついてくれるはず…そんなことを思っていたのだけれど。 「やばい、和歌。俺、運命の子に出会った」 しっとりと熟れた瞳で、蛍が言った。 これは今までと違う。そう直感した。 「ほんとうに〜?」 「マジだ」 「そんなこと言って、またフラれんじゃないの?」 「縁起でもないこというな。俺はさ、本気で彼女と添い遂げたいって思ったんだから。それぐらい俺には彼女しかいない」 「…ははっ、まぁ、フラれたらまた慰めてあげるから、安心しな〜」 潰れそうな気持を隠して、茶化すしかできなかった。 蛍からの連絡は日に日に減っていき、もうこのまま、1番仲良しの女友達という肩書きも、蛍への気持ちも消さなければいけないと覚悟しつつあった時。 『和歌、……慰めて』 生気のない沈み切った声。それで、どれだけ蛍がその彼女に本気で惚れていて、かつてないぐらい傷ついて弱っていることがわかった。 苦しい。 好きな人が苦しんでいる姿に、胸を抉られた。 けれど、同時に。 私は信じたことのない神様に、いやしくも感謝した。 蛍がまた私を必要としている。 踏み込むなら、いまだ。 蛍が弱っているその隙につけ込むというズルいけれど確実な戦法で、私は彼女に昇格したのだ。
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