この恋の終わりに、リボンをかけて

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それから2年。私たちは大学4年生になった。 「えっ、蛍くんに1回も好きだって言われたことないの?」 目の前で、生ビールを豪快に飲み干した千奈が目をぱちくりさせた。 「ないよ」 「うっそ、」 絶句しないで欲しい。 千奈は大学の友達でもちろん蛍のことも知っている。激重恋愛男という不名誉な実態も把握済みだ。 「…あの、蛍くんが?」 「そう、あの好き好き言うのが大好きな蛍がね」 「いやぁ…、あ、和歌と蛍くんは友達関係も長かったしさ、言わずもがなじゃない?」 そういうフォローは余計に悲しくなるけれど……。誰かにそう言ってもらいたくて、千奈にカミングアウトしたのだ。 しかし。 「…そう願って早2年経っちゃったよ」 「そ、それは…」 「今日だってさ。飲みに行くって言ったら、いってら~だけだよ?誰と行くの、どこにいくの、とか一切なし」 「えっーと…、」 項垂れた私を慰める言葉を探してくれているけれど、見つからないらしい。 そりゃそうだよ。 あの、蛍だよ? 付き合う子に重い愛を捧げまくっていた蛍なのに。私と付き合うと全くそんなことなかった。 ウザすぎる愛を囁かれることもなければ、愛の囁きを強要されることもない。どこにいようと、何をしようと干渉されることも束縛されることもない。 「考えようによっては、面倒くさい独占欲とか束縛とかないほういいじゃん?」 千奈、違うんだよ。 「千奈ぁ~……。私はさ、GPSアプリだってむしろ歓迎だし、頻繁なメッセージだって全部返せる自信があったし。いつでも蛍からのウザすぎる愛を何倍にもして返したいって思ってたんだよ…」 「和歌も重いわ」 「うぅ、蛍の激重な愛が欲しかったのぉぉ〜…」 だって、蛍のあの激重な愛は、彼女たちを大切に愛している気持ちの表れだもん。どの彼女にもちゃんと向き合って、その子だけを大事にしていた。 ―――― だからこそ。 私たちの関係が変わったあの聖なる夜に、今年は蛍にさよならをプレゼントすると決めたんだ。
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