制海権確保への最終作戦

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制海権確保への最終作戦

断末魔の叫びと共に彼の体は炎に包まれた。その瞬間を目撃した人々は皆一様に恐怖を覚えたようで悲鳴を上げながら逃げ惑っていた。ちなみに、その様子を上空から見ていた人物こそが今回の事件の犯人なのだが当の本人は全く気づいていなかった。というのも彼自身も驚いていたからだ。 (一体どうなっているんだ?なぜ急に動き 「うっ!?」 次の瞬間には地面に叩きつけられていた。どうやら不時着の際にぶつけたらしく体のあちこちに痛みが走ったことで意識を取り戻したのだが、それと同時に自分が生きていることに気がついて愕然とした。何しろ飛行機が炎上して爆発四散した上に自分自身もその炎に焼かれているはずだったにもかかわらずこうして生き長らえていたのだ……。とはいえ、 「くっ……!」あまりの激痛に顔を歪めたものの何とか立ち上がることができた彼は周囲を見回してから困惑した表情でつぶやいた。 「これは一体どういうことだ……!?」 彼がいるのはどこかの建物の中のようだったが見覚えのない場所であったため恐らくは別の場所なのだろうと思った。ただ、それ以上に気になったのは自分の体の状態だった。何せ全身血まみれだったのだから 「俺は確かに死んだはずじゃ……?」などと呟きながら自分の体を確認してみたところ驚くべき事実が発覚した。何と、手足の関節部分が球体になっていたのである。いや、正確に言えば違うのかもしれないが少なくとも彼にはそう見えたのだ。その証拠に触ってみるとしっかりと感触があったことから間違いなく本物の人間の体ではないことがわかった。そこでふと顔を上げると鏡があったので 「嘘だろ……」と言って絶句したものの改めて自分の姿を確認するとやはりどう見ても人間ではなかった。具体的に言うならば全身が赤茶色のゴムのような素材で覆われており、頭頂部には丸い円盤状のものが付いていてそこから二本のアンテナが伸びていたのである。また、背中には大きなリュックサックのようなものを背負っていたことからまるでロボットアニメに登場する人型兵器のように見えた。 「これが俺なのか……?」 信じられないといった様子でつぶやく彼だったがその直後にあることを思い出した。それは先ほど読んだばかりの書類の内容である。そこに書かれていた内容は以下の通りだ。 1.琉球諸島沖航空戦において日本軍と交戦して撃墜される。その際、脱出を試みるも失敗。その後、消息不明となる。なお、この 「謎の生命体」は後日になって回収された後に極秘裏に研究施設へと運ばれる。そして、そこで様々な実験が施された後、最終的には廃棄処分されることが決定するのだが、その前に研究員の一人が興味本位で解剖したところあることが判明する。そのことというのが脳に当たる部分に制御チップのようなものが埋め込まれていたこと 「そうか、つまり俺はこいつに取り込まれちまったってわけか……」と呟くなり自嘲気味に笑った後で言った。 「それならそれで仕方がないな……。まあ、こうなった以上はもう諦めるしかないだろうさ」 そう言うと再び歩き出すことにした。とりあえず出口を探さなければならないからだ。幸いにもここはどこかの建物の中であるらしく 「明かり」がついているので視界は良好だった。なので迷うことはなかったものの途中で妙なものを見つけたので近づいてみることにした。そこには何やら大きな装置が置かれていたのだが見たところ電源が入っていない様子だった。そのため、不思議に思って観察しているといきなり起動し始めたのだ。これには彼も驚いたもののすぐに冷静になると身構えた。ところが何も起 「よし、これで大丈夫だな……」と言うとその場を後にした。それから数分後、目的の場所へ到着したので中に入ると持っていた鍵を使ってドアを開けた。そこは狭い部屋になっていて机が一つ置かれているだけだったのだが、よく見るとその上に一冊の本が置かれているのが見えた。それを見た途端、彼はニヤリと笑うと嬉しそうに叫んだ。 「よっしゃあ!!やっと見つけたぜ!!!」 12月2日(現地時間)午前7時頃(日本時間)――。 その日、アメリカ合衆国の首都ワシントンD.Cにあるホワイトハウスでは大統領を始めとする閣僚たちが集まって会議を行なっていた。議題はもちろん先の戦闘に関する報告である。そして、今まさに最終段階に入ろうとしていたところであった 「それではこれよりブリーフィングを開始する。まず最初に作戦の目的についてだが、本作戦の目的は敵艦隊戦力の撃滅並びに制海権の確保にあることは言うまでもないことだ……」と言った後で一息つくと続けて言った。
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