ヤマダタロウ

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ヤマダタロウ

「この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません」と書いたことがあるように架空の人物を登場させることでそれらしく見せるというものだった。具体的には自分の家族や友人などをモデルにして登場人物の名前を変えれば完璧だと思ったものの、ここで問題が発生したことで頭を悩ませていた。というのも、肝心の名前が思い浮かばなかったからである。そこでしばらく悩んだ末にようやく思いついた名前は、なぜかいつも自分が呼ばれているあだ名だった。その由来は単純明快で学生時代の頃につけられたニックネームをそのまま流用したのである。そんなわけでさっそく実行に移してみたのだが、結果は予想通りというか何と言うか散々な結果に終わった。というのも、あまりに安直過ぎたせいでリアリティーがなくなってしまったのだ。例えば、仮に自分の名前を山田太郎とするならば『ヤマダタロウ』となるわけでこれでは何の面白みもない名前になってしまうというわけだ。それどころか、もしこれを本名だと勘違いされたら大変だと思い慌てて却下することにした。ところがそうなると他に良いアイデアが浮かんでこないのも事実であり途方に暮れてしまった。だが、だからといって諦めるわけにはいかなかったので必死に考え続けたのだが一向にいい案が浮かばなかったため、ついには開き直ることにした。 「まあ、別にそこまで真剣に考える必要もないか……」と呟くなり大きく伸びをした後で周囲を見回してみるといつの間にか日が落ちていて辺り一面真っ暗になっていたことに気がついた。そのため、急いで明かりをつけることにした。といってもマッチなどの類いを持っていないのでどうしようかと考えていた。ちょうどその時だ。部屋の本棚に「バックトゥザフューチャー」のDVDを見つけた。 「」 それを見た途端、思わずニヤリと笑った後でこう言った。 「これだ!」 こうして彼は映画さながらの展開を迎えることになったのである。 16 同日(現地時間)午後11時頃――。 この日、沖縄県那覇市内にあるアメリカ軍基地内に存在するとある建物の中にある一室での出来事である。室内には大勢の男たちが集まっていたのだが、彼らの視線はある一点へと集中していた。そこには一人の日本人男性の姿があったのだが、名前を田中一郎といった。年齢は35歳、職業はフリーターで趣味は読書とインターネット鑑賞というごく普通の人間だった。また、見た目に関しても特に目立つような特徴はなくどこにでもいるような平凡な容姿の持ち主だったが一つだけ違う点があったとすれば、それは年齢の割には妙に落ち着いていることだろうか? 「なあ、どう思う?」 ある男が問いかけると他の男たちは一斉に顔を見合わせた後、口々に話し始めた。その内容とは以下のようなものである。 1.今回の一件は日本政府の仕業ではないのか? 2.だとしたら目的は一体何なのか? 3.そもそも何のためにこんなことをしたのか? 4.我々にはどのような影響があるのか? 5.今後、我々はどのように行動すべきか? 6.日本国民はどう動くべきなのか? 7.米軍の対応策について 8.その他の問題について 9.最後に一言 10.終わりに これらの疑問に対して答えられる人間は誰一人として存在しなかった。何故なら彼らは皆、一介の軍人に過ぎないからである。つまり、 「俺たちはただの駒にすぎないってことだな……」と言った後でため息をついた後で言った。 「まあいいさ、どうせ俺たちみたいな下っ端じゃ何もできないんだからな」 11月4日(現地時間)午前6時45分頃――。 その日、沖縄県那覇市内にあるアメリカ軍基地内に存在するとある建物の一画にある部屋で 「さて、どうしたものか……?」と呟きながら頭を掻いていたのはアメリカ海軍の特殊部隊に所属する男であった。彼の名はマイケル・アンダーソンといい階級は中尉で今年30歳になるベテランの兵士だった。そんな彼がなぜこんな所にいるのかと言うと実は訳ありだったのだ。その理由というのが先月に彼が率いる部隊が任務中に予想外の事態に遭遇したことで危うく 「全滅するところだった」からである。幸いにも命だけは助かったものの、その際に負った怪我が原因で現在は治療のために入院中だった。そして、本来なら今も病院で安静にしているはずだったのだが、今回ばかりはそういうわけにもいかなかったのである。なぜなら先日に起こった事件に関して調査を行う必要があったからだ。何せ、あの事件は未だに解決していなかった 「それにしても一体どうなっているんだ?」 そう呟いてため息をつくと天井を見上げた。するとそこには見慣れない装置が設置されており、そこから伸びているコードの先には小型のスピーカーらしきものが設置されていた。それを見て彼は思った。12e1963e-4565-4a0d-9e0d-d5c1ac925ee7
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