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誰が犯人?――海兵隊員が起こした事件の謎を解く
そう言われてハッと我に返った俺は彼女に言われるままにメモを取り始めた。
ロバートが言った。「私はncisすなわち海軍犯罪捜査局の人間だ。部隊内部で起こった事件を扱う」
その話によるとロバートは犯罪心理学のエキスパートであり既にプロファイリングを終えているということだ。
「犯罪者は基本的にコンプレックスの塊です。そしてもどかしさを理解してもらおうと承認欲求を募らせる。そこでどうするかと言えば、事件の中に何らかのメッセージを紛らせるんです」
「しかし、そんなことをすれば捕まってしまう。どうしてわざわざ証拠を残すような愚行を?」
「それが犯罪者の本音なのです。早く自分を捕まえてほしい。事件を終わらせたい。逮捕されれば訴追され、裁判を通じて自分の生い立ちや事件に至った背景がつまびらかになる。つまり耳目を集めて自分を理解してもらう手段として犯罪を利用するのです。だから、この事件にも何らかのメッセージが含まれているはずだ」
「例えば?」
「具体的には被害者のダイイングメッセージを捏造したり犯行現場の点を線で結んだときにイニシャルを描くように連続殺人を起こす」
「なるほど、しかし一体誰が犯人なんでしょう?」
「それを解明するのが私の役目です」
そう言うと彼は立ち上がって部屋を後にした。
1週間後(現地時間)午前11時30分頃――。
沖縄県那覇市内にあるアメリカ空軍基地内に存在するとある建物の一画にある部屋で
「ふう……何とかここまで漕ぎ着けたか」と言いながら額の汗を拭うと近くの椅子に腰を下ろした。どうやら緊張していたらしく思わず溜息が出てしまったもののすぐに気持ちを切り替えてパソコンの画面に目をやった。そこには『問題用紙』と書かれた文書ファイルが表示されていたのでマウスを操作してみると自動的に開いて内容を確認した後で軽く頷いてから呟くように言った。
「よし、始めるか!」
そう言って気合を入れると一気に書き進めていった。やがて最後まで書き終えたところで大きく息を吐くと改めて見直してみた。すると、その内容は次のようなものだった。
Q.あなたは沖縄県那覇市に実在する米軍基地の存在を知っていますか? A.知っている B.知らない C.知らない D.知っている(ただし、機密事項
「さて、どうかな?」
そう呟きながら軽く息を吐いた後で再び文章を読み直した後でしばらく考え込んだ後で再びパソコンに向かった後でキーボードを打ち込んでいった。
それから数時間後――。
沖縄県那覇市内にある某ホテルの一室にて
「よし、これで完成だ」
と言いながら最後の仕上げを終えた後で満足そうに頷くとベッドに相関図を広げた。文字通り関連する証拠をそれぞれ線で結び一つの大きな系統樹にする。その頂点に一つのキーワードがあった。『ポックリさん』だ。
「で、そのポックリさんって誰なんですか? 実在する人物なんですか?」
「いや、実在しないよ」
「え……?」
思わず絶句してしまった私に向かって彼が言った。
「これはあくまでも概念的なものなんだ。要するに都市伝説のようなものだよ」
そう言いながら彼は一枚の紙を取り出した。そこに書かれている内容はというと以下のようなものであった。
・1945年8月6日に広島へ原爆投下された直後に出現したとされる霊的存在である。
・見た目は老人だが、実際には子供の姿をしているとも言われている。
・出現条件は不明であり、遭遇する確率は極めて低いとされている。
・その正体については諸説あるもののどれも信憑性に欠けるものばかりだという。
・そのためその存在そのものを信じる者は殆どおらず、単なる噂話に過ぎないと考えられている。
・もし、仮に本物が存在したとしても、それを認識することは不可能なのではないか。
「どうだい、面白いだろ」
「まあ、そうですね……」
「でも、この中に一つだけ嘘がある」
「えっ、そうなんですか?」
「ああ、そうだよ。実はね、ポックリさんは実際に存在するんだ」
「……本当ですか?」
半信半疑のまま尋ねると彼は笑みを浮かべながら頷いた後で説明を始めた。
「まず、最初の質問だけど、本当に存在しているかどうかについてだけどね、答えはイエスだ。但し、存在はしているけど誰も見たことがないんだよ」
「どういうことですか?」
「そのままの意味さ。だってそうだろう? もしも目撃情報があるならもっと有名になっていてもおかしくはないし、そもそもの話としてこんな奇妙な現象が起きるはずがないじゃないか」
そう言われてみると確かにその通りだった。今までの話を総合すると、どう考えても現実的に考えてあり得ないことばかりだったからだ。そんなことを考えていると彼がさらに続けた。
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