奇妙な出来事が続く、謎の少女マオの正体とは?

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奇妙な出来事が続く、謎の少女マオの正体とは?

大統領は驚いた表情で聞き返した。ドイツは第二次世界大戦での同盟国であり、宿敵でもある国だ。そのドイツが日本に戦争を仕掛けたというのだ。この報せに驚かないわけがない。しかし、疑問も生じた。果たして、本当にドイツは日本に宣戦布告を行ったのだろうか?もしそうだとするならば、何らかの形で情報が入ってくるはずである。ところが、そのような話は今のところ聞いていない。このことから、ドイツの勘違いか、あるいは何かの手違いによって起こったものと考えるべきだろう。そのため、わざわざ騒ぎ立てる必要はないかもしれない……。しかし、大統領は思考を中断させた。「待て!もしかするとこれはチャンスなのかもしれない!うまくいけば日本の領土を丸ごと手に入れることができるかもしれないからな!」そう考えた彼は即座に外務大臣に連絡を取り、現地の情報を集めることにした。その結果、米軍の姿は見られず、両軍の間で激しい戦闘の痕跡もなかったということが判明した。このことから、日本側が一方的に攻撃を仕掛けたものと思われる。要するに、今回の一件は完全に奇襲だった。それにより、ドイツ軍側は大混乱に陥り、まともな反撃すらできず壊滅的な打撃を被ったというわけだ。 「調査により、日本軍の戦力について様々なことが明らかになりました。中でも注目すべきは、日本軍の主力戦車である九七式中戦車チハの存在です。この戦車は、時速60キロで走行でき、第二次大戦中のアメリカ軍の主力戦車であったM4シャーマンよりも速いことが判明しました。また、主砲の威力も凄まじく、たった一撃で敵戦車を撃破することができました。燃費はやや悪いですが、石油資源が豊富な日本近海には燃料を補給するための設備が多数あります。これらの特徴から、九七式中戦車チハは無敵の強さを誇る戦車であったと言えます。」 22. 同年同月23日午後8時45分(現地時間)――。 その頃、イタリアの首都ローマ市内にあるレストランではちょっとした騒動が起こっていた。というのも、店内にいる客の一人が突然叫び声を上げたかと思うと、そのまま店外へと飛び出していったのだ。そして、数分後に戻ってきた時には一人の少女を連れていたのだ。いったい何事かと驚く周囲の人々を余所に少女は淡々とした口調でこう言った。 「皆さん初めまして。私はマオといいます」 それを聞いた人々は一斉にざわついた。無理もないだろう。何せ、見た目は幼い少女にしか見えないにもかかわらず流暢な日本語を話しているのだから……。そんな彼女に向かって一人の男が恐る恐る話しかけた。 「あ、あの~すみません。一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」 すると、彼女は小さくうなずいてから答えた。 「どうぞ」 「あなたは日本人なんですか……?」 「ええ、そうですよ」 彼女がそう答えると、今度は別の人物が口を開いた。 「そ、そうですか……。えっと、それじゃあ、ここはどこですか?」 「ここは沖縄県です」 彼女の言葉にその場にいる全員が凍りついた。それはそうだろう。なにせ、自分たちの常識では考えられないような出来事が起こっているのだ。これで平静を保っていられるわけがない。しばらくの間、沈黙が続いた後、ようやく落ち着きを取り戻したのか一人の男性がおずおずと尋ねてきた。 「き、君はいったい何者なんだ? どうして俺たちの前に現れたんだ?」 その問いに彼女はこう答えた。 「あなた方の質問にお答えする前に一つだけ確認しておきたいことがあります」 「何だい?」 「あなた方は太平洋戦争というものをご存知でしょうか?」 彼女の問いかけに人々は顔を見合わせた。そして、お互いに目配せをした後で代表して男が答えた。 「ああ、知っているよ。確か、1941年12月8日に開戦し、1945年6月にポツダム宣言受諾で終戦した戦争だったかな?」 その言葉に彼女は大きくうなずいた。それを見た男はホッとした表情を浮かべながら話を続けた。 「それなら良かった。じゃあ、改めて聞くけど、君の名前は何ていうんだい?」 「私の名前ですか? そうですね……」 しばらく考え込んだ後で彼女は静かに答えた。 「私の名前はマオと申します」
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