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「あ!もうすぐ二時だ!試写会始まる!」
「菜子うるさい!今、宗介と大事な話してんだよ」
「こっちも大事なの!映画の試写会オンライン配信!見逃せないんだから!」
一色さんはスマホで試写会を見始めた。
「西島さんかっこいいー!」
一色さんが騒ぐので、僕もなんとなく試写会を見てみた。そして、一色さんのスマホ画面に釘付けになった。
「宗ちゃん、めっちゃ見るじゃん。西島さんって男から見てもかっこいいでしょ?」
どうでもよかった。僕が見ていたのは、その隣にいる女性だった。
「夏川さん、映画『告白』の見どころを教えていただけますか?」
『特別』と感じるわけだ。
夏川さん…だからナツか。
「はい。この映画は…」
99歳だから知り合いばっかり?
嘘つきめ。こんな仕事してたらみんなに知られて当然だ。僕のようにテレビやネットを見ない人を除いては。だから僕じゃなきゃダメだったのか。
「それでは映画のタイトルにちなんで、お二人に何か告白していただきましょう。まずは夏川さんから!」
「はい。では告白します…実は私…99歳なんです!」
笑いが込み上げてきた。
「は?あの…それはどういう…」
インタビュアーが困っている。
「この女バカじゃねーの?」
天真が呆れている。
「どー見てもこいつ、30代半ばってとこだろ?」
抑えられず僕は笑ってしまった。
「宗ちゃん、どうしたの?」
「いや、この人、99歳だと思うよ」
「宗介、お前何言ってんだ?…って、おい…おいおいおい!99歳って…まさかお前…」
「宗ちゃん…嘘でしょ…冗談だよね…」
僕は二人を見ず、画面を見ながら言った。
「天真の言うとおりだ。出会い系にろくな女はいないね」
僕は画面に向かって微笑んだ。
99歳の彼女は、イタズラっぽく笑っていた。
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