99歳の彼女

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帰ってベッドに横になった。今日は疲れていた。大学から一人暮らしをするアパートまで徒歩15分。疲れる距離ではないが、天真にいろいろ言われたせいかもしれない。 僕も二十歳の健全な男だ。女性との行為に興味がないわけではない。 「新しい経験か」 なんとなく、マッチングアプリを開いた。 何人かの女性プロフィールを見てみたが、しっかりと書かれていた。名前や年齢の他、容姿や性格、仕事、趣味に至るまでしっかり記載されている。 こういうのを見て気に入った相手を探すのだろうが、僕は気乗りしなかった。 アプリを閉じようとしたとき、メッセージを受信した。反射的に内容を確認してしまった。 『こんにちは』 とだけあった。 昼にきていたメッセージが 『ヤラハタとやりたい』 みたいなものばかりだったので、このメッセージが逆に気になった。 プロフィールを確認してみる。 名前は『ナツ』年齢は『99歳』となっており、その他の情報は一切なかった。 「99歳って…」 今の時代、99歳という年齢は現実的だと思うが、この場に99歳は不釣り合いな気がして、思わず笑ってしまった。 『こんにちは』 そう返信した。 ナツという人も僕と同じでプロフィールが一切ない。だから、『こんにちは』だけの返信でも失礼がないと思った。 『はじめまして』 と返信がきた。この画面の向こうに、ちゃんと人がいるのだと思った。そのあと、ナツさんと他愛もないメッセージのやりとりを続けた。
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