99歳の彼女

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数日間ナツさんとのやりとりが続き、会う約束をした。 僕はナツさんに会ってどうしたいのだろう。 目的がわからないまま、会うのは明日になっていた。 日付が変わる時間まで考えても答えが出ないので、そろそろ寝ようかと思った時、玄関のドアを乱暴に叩く音が聞こえた。 慌てて玄関へ行き、ドアスコープから外を確認すると、天真が立っていた。 「どうしたの?」 ドアを開けると、いつもと違う様子の天真がいた。ひどく酔っているようだった。僕は天真を中に入れ、とりあえず水を飲ませた。 「大丈夫?」 水を飲み少し落ち着いたようだったが、それでもいつもと様子が違っていた。 「なあ、宗介…」 おもむろに天真が話し始めた。 「オレの母親、男作って出てったんだよ」 天真の両親が離婚しているのは知っていたが、理由は知らなかった。 「オレが中学の時だ。オヤジからいきなり言われたよ。でさ、オヤジが言うんだよ。周りから何を言われても、母さんを責めるなってさ」 「そうだったんだ…」 「散々言われたよ。オレが少しでも悪さするとさ、やっぱり男作って出ていく女の子供だな。みたいにさ」 ナンセンスにも程がある。その主張にどんな根拠があるのだろう。 一般論という虎の威を借り、無責任な主張を振りかざす狐。 そんな輩に天真は辟易したに違いない。 天真がなぜ僕を慕ってくれるのか、少しわかった気がした。 「でもさ、やっぱ憎めねーんだわ。母親だからさ。だから…」 「だから…どうしたの?」 「だからアプリで人妻とヤリまくったんだよ…」 「どういうこと?」 「あいつら、平気でオレの上で乱れるんだよ。でも家に帰ったら、旦那に笑顔で料理作るし、子供にも優しくするんだよ。平気でそんなことがさ…できるんだよ」 天真の目から涙がこぼれた。僕は天真が泣いているのを初めて見た。 「そんな奴らの相手してるとさ…これが普通だって思えてくるんだよ…だから…別にオレの母親が特別悪いわけじゃないって思えるんだよ…そう思うとさ…母親のこと…少し許せる気がするんだよ…」 天真の行動は、天真なりに、なんとかお母さんを許そうとして、考えて考えて、辿り着いた結果だったのだ。 決して褒められる行動じゃない。でも、不器用なりに必死だったんだ。 「今日の相手の子がさ…中学生だったんだ…ヤッた後写真見せてきて…これうちの息子って。それ見てオレ…キレちまって。子供の気持ち考えたことあんのか!って…ビビって帰っちまったよ」 当時の自分と同じ中学生…そのことで天真は反応してしまったのだろう。 「でもそれはダメなんだ…そういうのなしのルールなんだよ。オレ、酷いこと言った…彼女に…酷いことしちまった」 天真はそう言って泣き崩れた。 「大丈夫…天真は優しいよ…大丈夫だ…」 僕は天真の肩に手を置いて言った。心からの言葉だった。
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